Netflix「13の理由」シーズン3 感想レビュー 死者をして死者を葬らせていいのか

シーズン1や2で描かれなかった加害者側の家庭環境や「有害な男らしさ」を描いたシーズン3。「人間」としてのブライスの一面やタイラーの「克服」の過程は必要だったと思うけど、テンポが少し遅く犯人捜しの展開がワンパターン化していたように感じた。

 

score: 6.9/10

 

 

問題を抱えた若者たちを等身大で描こうとしたNetflixオリジナルドラマ「13の理由」

2019年配信されたシーズン3は対抗試合の後ブライス・ウォーカーは誰に殺されたのかを追っていく形で展開していく。

 

13の理由は自殺してしまった女子高生のハンナ・ベイカーがなぜ自殺を決意したのかをテープに残したという設定からスタートした。海外では観た後にハンナと全く同じ方法で自殺した子供が出てしまい、Netflix側が自殺のワンシーンを削除するなど、物議を醸す作品でもあった。

 

シーズン3は新たな転入生、アニの視点を通したブライス殺しの犯人捜しが主軸となって話は進んでいく。現在の会話から関連する過去の場面を回想してだんだんと過去に何があったのかを明らかにしていくときのカメラワークや配色も凝っていて(過去はちょっと明るい色彩で、現在は冷たく暗い色が基調とされていたり)、アスペクト比が変わったりする。ただ、これが少し分かりづらくテンポも遅い。率直な感想としてはシーズン1や2のようにのめりこむように見ることはできない作品だった。(以下ネタバレ有)

 

アニという新キャラ

中の女優さんが批判されてSNS封鎖にまで追い込まれたという問題にまで発展してしまったみたいだけど(それは全く別問題で本当にひどい話だと思う)、作品の中の「アニ」はまず好かれるキャラではなかった。まず、詮索好きでクレイを犯人だと疑ったりジャスティンたちにも「対抗試合の後はどこにいたの?」と聞きまわったりするし、盗み聞きや盗み見をしている場面も多い。もっと最悪なのは初恋の相手ハンナの自殺を止められないまま失ったというトラウマを抱えるクレイに簡単にキスした挙句、ブライスと寝ていたということが発覚すること。クレイにとっては片想いの相手をレイプし自殺に追い込んだ男に心を開きかけた女の子をまた奪われるという胸糞展開。クレイがあまりにもかわいそう。

でも「アニ」はなかなか綿密なキャラ設定だったと思う。常に体裁ばかりで周りをごまかしたり物事の辻褄を合わせることばかりに長けていて、八方美人な態度でどのグループにも首を突っ込んでいく。浮いてはいないけど、どのグループにも馴染みきれてはない。学校生活の中で誰もが目にしたことがある人間だ。

そのキャラ設定の背景にはちゃんと厳格な母がいるし、「母の前で理想の自分を演じることは苦じゃない」とクレイの前で言いきったところも血が通った「アニ」を作り上げているなと感じた。そしてそんな嘘つきで利己的なアニが最後「自分が全ての偽証をしてクレイを救う」という大博打に出たのはもはやアニの変化なんじゃないかとさえ思えた。常に友達を気にかけていたクレイを見て生まれた変化なんだろうか。人間はなかなか変われないけど(最後まで嘘つきは変わらなかった)、その中でも起こりうる変化を描くバランスがこのドラマは絶妙な気がする。ブライスもそう。

 

ブライスとモンゴメリーの描かれ方

金持ち特有の寛大さと傲慢さを併せ持つブライスがなんとか更生しようと奮闘する姿は、いくらレイプ魔とはいえ同情してしまった人も多かったはずだ。ただ被害者は別にそれを許さなくてもいいし、それはまた別問題だということも作品を観れば分かるように作られていたと思う。そしてそんなブライスでも日本のドラマみたいに別人レベルで急に人格が改正するなんてこともなく、後半では自業自得の嫉妬に狂ってザックの足を大けがさせたりする場面もあり、そこら辺のバランスが絶妙だった。一番の加害者の「人間」の部分を見せ、そこに分かりやすい説明を加えなかったおかげで「なぜ彼はこうなってしまったのか」という思考を放棄しないで済むような、そんな構成になっていた。

一方モンティは明らかに家庭に問題がある。タイラーを強姦した罪で刑務所行になったモンティに父親が一言「ゲイなのか?」と問う場面があり、そうだとモンティが答えると父親は息子の顔に唾をかける。手錠をしてるせいで手で拭うこともできず、なんとか机に顔をこすりつけて拭こうとするモンティの姿はなんとも言えない悲しさがあった。普段から同性愛を嫌悪するような発言を家庭で聞かされ、女遊びが男らしさの象徴だと信じてるようなアメフト部にいては自分が同性愛者だということを認められなくても無理はない。その反動で自分に言い寄ってきたウィンストンを殴ってしまうのも少しは理解できる。




 

ラストシーンの解釈

犯人はアレックスだった。ジェシカもその場にいて彼らは共犯だった。ザックもブライスのことをぼこぼこに殴っていた。それをみんなでモンティー1人のせいにした。最終話のタイトル「Let the dead bury the dead(死者をして死者を葬らしめよ)」、これは聖書の言葉だけど、このドラマでの使われ方だと「死人に口なし」という意味にしか聞こえない。保安官であるアレックスの父親も、息子の犯行を知りながら証拠を隠蔽。そして最後はみんなで「一件落着」なパーティーを開くというラスト。うーん。これでいいのか、という疑問を持たない人はいないだろう。

そもそもアレックスやジェシカはクレイが冤罪であることを知っていながら黙って連行されるのを見ていたことになるし、クレイの性格ならまず間違いなくアレックスに自首を勧めるだろう。また、アニの偽証途中にモンティーの死が知らされるということは、モンティーが死ぬ前からモンティーに罪を着せることが決定していたということであり、モンティーもブライスに劣らず嫌な奴だったけど、だからと言って悪人2人に罪を着せて終わりにしてしまおうというのはひどすぎる。ハンナの自殺の時にあれほどみんなで自分のしてしまったことや真実と向き合おうと奮闘していたのに、最後の最後で隠蔽という選択を選ぶのか。

シーズン4で最後に登場したウィンストンが世間に真実をばらす、みたいなところから始まってこの辺のところを解決していくのかもしれないけど、シーズン3に関してはちょっと消化不良なラストだったと思う。

 

総評

社会問題に向き合うドラマとして加害者側であるブライスやモンティーの家庭や葛藤を描く必要はやっぱりあったのだと思う。あとは被害者側であるタイラーやジェシカの克服へと向かう過程も。ただ「怪しい人物が浮上→違った」の流れがワンパターン化しすぎていてシーズン1や2のような食いつきで見ることはできなかったし、ドラマとしての面白さよりも社会問題を描くことにウェイトを置きすぎてしまったような印象だった。最終的にはラストシーンでの疑問がーズン4でどう扱われていくのかがカギになってくる気がする。