【2020年版】おすすめベストアルバムTOP50

50. Built to Spill「Built to Spill Plays the Songs of Daniel Johnston」


2017年に行った最後のツアーでダニエル・ジョンストンのバックバンドを担っていて、親交が深かったBuilt to Spillのカバー集。

Built to Spillが参加したバンクーバー公演のリハーサル・セッションの楽曲が収録されています。

カバー盤をベストに入れて良いのか迷ったのですが、Daniel Johnstonの楽曲を優しく繊細なオルタナカバーで蘇らせてくれたこのアルバムはかなり聴いたので番外編的な感じで紹介します。丁寧なカバーにDaniel Johnstonへの愛を全面に感じることができます。

49. M. Ward「Migration Stories」


Zooey Deschanelとのユニット、She & Himとしての活躍でも知られるM. Wardの10枚目。

カナダのケベック州を旅しながらレコーディングされたという本作は「移住する人々の物語」というタイトルが付けられていて、牧歌的なカントリー調の楽曲が多いです。

目立ってメディアから高評価を受けた作品というわけではありませんが佳曲揃いの良作です。

48. Best Coast「Always Tomorrow」


LA出身の男女デュオBest Coastの新作。

パラモアやジミー・イート・ワールドらを手掛けたカルロス・デ・ラ・ガルサがプロデュースを手掛けています。

ギターがジャカジャカ鳴ったパンキッシュかつ疾走感溢れる楽曲が多く、純粋にバンドサウンド全開の曲が好きだと思わせてくれた1枚です。

47. eastern youth 「2020」


eastern youthの18作目。激動の2020年の中にあっても、eastern youthは相も変わらず生命力に溢れた音楽を鳴らしてくれているんだと思えました。

キャリアも長く、アルバムを聴く前から一種の安心感さえ覚えてしまっていたけど、冒頭の「今日も続いてゆく」を聴いた時に、爆発したエネルギーのような轟音に真正面から心を打たれたのが忘れられないです。

46. Matt Elliott 「Farewell to All We Know」


Flying Saucer Attackのメンバーとしてキャリアをスタートし、1990年代中頃からはThe Third Eye Foundation名義として90年代のブリストル・シーンを牽引したMatt Elliottの4年ぶり8作目。

アルバムのタイトルは「私たちが知っている全ての人に別れを告げる」の意味。フォーキッシュなサウンドを基調としながらも、モヤがかかっているかのようなどこか鬱屈とした空気感がアルバム全体を覆っています。

45. The Men「Mercy」


ブルックリンを拠点にするポストパンク、ノイズロック、サイケロック・バンドThe Menの8枚目のアルバム。

ネオアコやガレージロックなど幅広い音楽性を楽しむことができるバンドですが、今作はシンセポップなど新しい試みに満ちた作品になっているのが大きな特徴です。

80年代ポップから、60年代サイケロック調の曲もあり、聴いていて飽きないです。朝焼けとも夕焼けともとれるアルバムのアートワークも好きです。

44. Wire 「Mind Hive」


結成から40年、ポストパンクのレジェンドWireの通算15作目。

ヘヴィーさと無機質さが絶妙に同居しているようなチグハグ感が癖になる冒頭の「Be Like Them」から始まり、ポストパンクっぽさもある軽快なナンバー「Cactused」、ドリーミーかつアンビエントな「Unrepentant」「Humming」などドラマチックな構成が楽しめるアルバムです。

43. Adrianne Lenker「songs」

現行USインディーシーンを牽引するBig Thiefの女性シンガーAdrianne Lenkerの最新ソロ・アルバム。

長尺のインスト曲からなる「instrumentals」と同時にリリースされた今作はアコースティック・ギターの温かい音色と共に展開していく心地良い作品です。

マサチューセッツの山小屋中で隠遁生活を送りながらデジタル・プロセスを一切経由せずに全てアナログ機材でレコーディングされたということもあって、全編が都会の喧騒から離れた自然の温もりに満ち溢れています。

42. サニーデイ・サービス「いいね!」


タイトルの「いいね!」というタイトルイメージ通り、バンド、ひいては音楽が好きだと素直に言いたくなるようなアルバムです。

1曲目の「心に雲を持つ少年」はThe SmithsのThe Boy With The Thorn In His Side(心に茨を持つ少年)のオマージュであり、ラストで繰り返される「ずっと心に太陽がある」もThere Is A Light That Never Goes Outを彷彿とさせます。

80年代のポストパンクの流れを汲んだネオアコが好きな人にはたまらないアルバムなのはもちろん、好きな音楽を素直に好きだと言うこと、あまりにもシンプルな音楽を聴く醍醐味に気づかせてくれるようなアルバムです。

41. Waxahatchee「Saint Cloud」


WaxahatcheeことKatie Crutchfeildの5枚目のアルバム。

Sonic YouthやDinosour.Jrを手掛けてきたJohn Agnello をプロデューサーに迎え、90年代のグランジを思わせた前作のサウンドから一転、Whitneyの「Forever Turned Around」を手掛けたBrad Cook(Megafaun)をプロデューサーに迎え、カントリーな作風が特徴的です。

40. Jeff Tweedy「Love Is the King」


WilcoのフロントマンJeff Tweedyのソロ作。このアルバムはコロナウイルスの感染拡大に伴うロックダウンの中で制作されました。

世界の暗い情勢とはかけ離れたカントリーな楽曲群は内省的で安らぎを与えてくれます。ジェフは今作について以下のように語っています。

「ロックダウンの始まった頃、僕は自分を慰め元気付けるためのカントリー・ソングを書きはじめたんだ。フォークとかカントリーの類(の音楽)は僕にとっては快適な食事みたいな存在でとっても心地いいものなんだよ。「Guess Again」は、この一連の楽曲制作によって、うまく外界から距離を置くことが出来たというとてもいい例になっていると思う。僕の恵まれているところを思い返しながら、自分の生活の中に、愛すべきものを持ってることがなんて幸せなんだっていうことを実感できたよ。ちょっとした恐怖とか不安が忍び寄ることもあったから、まあずっと安定しているのは難しかったんだけど、それから数週間後にはこの作品『love Is The King』が出来たんだ。希望に溢れた作品なんだけど、間違いなく自分を落ち着かせる能力の限界ってものを発見した作品でもあるよ。」

39. Phoebe Bridgers「Punisher」


Pitchforkで“Best New Music”を獲得し、グラミー賞の4部門にもノミネートされたセカンドアルバム。

特筆すべきは日本を舞台にした「Kyoto」。自己肯定感の低さから「自分を詐欺師のようだ」と感じてしまうインポスター症候群について歌った楽曲。

フォーキッシュでモダンアメリカーナな作風はもちろん、彼女の繊細かつ丁寧な歌い方を生かすかのようなアレンジと、内省的な歌詞の世界に引き込まれます。

38. Fiona Apple「Fetch The Bolt Cutters」


Pitchforkにて10年振りに10点満点を獲得した今作。

「ボルトカッターを持ってきて」というタイトルはイギリスのTVシリーズ「The FALL 警視テスラ・ギブソン」の中で、拷問された少女を救うために言ったセリフから着想を得たそうです。

「ひどい状況に囚われたら、ボルトカッターを持って逃げ出して」という想いが込められたこのアルバムは彼女らしい毒々しさと苦悩に満ちています。アルバム名と同名のトラック「Fetch The Bolt Cutters」でも「ボルトカッターを持ってきて、私はここに長く居すぎた」と繰り返されるのが印象的です。

37. Machine Gun Kelly「Tickets to My Downfall」


Machine Gun Kellyの5枚目のポップパンクアルバム。全米Billboard 200で初の1位を獲得しました。

青臭さ全開のポップパンクと言ってしまえばそれまでだけど、マシンガンケリーが過去の暗い青春時代を肯定し、明るく爽快なサウンドに昇華しきったこの作品はきっと多くの若者にとっても意味のあるアルバムだったんじゃないかと思います。

36. Kevin Morby「Sundowner」


初期のバンドサウンドに近い今作。カントリーやフォークといったザ・00年代USインディーなサウンドが楽しめるアルバムです。

地元のテキサスに戻った彼が都会の喧騒を離れて4トラックのレコーダーに録りためた曲が元となっています。1曲1曲にインパクトがあるというアルバムではないですが、田舎の午後の夕暮れを彷彿とさせるような佳曲揃いです。

35. Yellow Days「A Day in a Yellow Beat」


UK南イングランド出身のシンガー・ソング・ライターGeorge Van Den Broekのソロ・プロジェクト、Yellow Days。

セカンドアルバムとなる今作は、Mac DeMarco、John Carroll Kirby、Nate Fox、Shirley Jones、Nick Walters、Bishop Nehruといった個性溢れるアーティストをゲストに迎えています。

ハイセンスなネオソウルを聴かせてくれる一枚で、陽気さと気怠さのバランスが絶妙です。

34. Taylor Swift「Folklore」


The Nationalのアーロン・デスナーをプロデューサーに迎え、ロックダウン中に創作された今作。

テイラーと言えば色彩豊かなポップソングを想像する人も多いと思いますが、他者との隔絶された日々にインスパイアされて制作されたこのアルバムは自己との対話であり、物語を読んでいるかのような気持ちになります。リードトラック「cardigan」を始め、「Sleep Will Beast」のThe Nationalを彷彿とさせるような落ち着いたキーボードで展開していく楽曲も多いです。




33. 藤井風「HELP EVER HURT NEVER」


「常に助け、決して傷つけてはいけない」というサイババというインドの聖人の格言をタイトルに掲げる本作。

冒頭の「何なんw」の単芝を見た時はタイトルだけで敬遠しそうになりましたが、このアルバムのハイライト的キラーチューンです。

本人が歌謡曲から影響を受けていることを公言していることもあり、歌謡曲的な耳馴染みの良いメロディーと現行シーン的なソウルやファンクっぽいグルーヴ感が心地良いです。

32. 横沢俊一郎「絶対大丈夫」


ラブリーサマーちゃんがローリングストーンの記事で「お気に入りの10枚」に挙げているのを読んで「ハイジ」を聴き始めて、そこから好きになったアーティストです。

前作よりポップ度がアップグレードされていますが、前作に引き続きドリーミーなボーカルと、生活感溢れる言葉選びが抜群な歌詞が本当に良いです。

31. The Breathing Effect「Photosynthesis」

LAのエレクトリック・デュオの2ndアルバム。

知名度はあまりないですが、ソウル、ファンク、ジャズロック、フュージョン、プログレなど様々なジャンルを現行の音楽に昇華した作品です。

30. Thundercat「It Is What It Is」


名盤「Drunk」から3年ぶりに発売されたThundercatの新作。フライング・ロータスが共同プロデュースを担当しています。

また、チャイルディッシュ・ガンビーノ、カマシ・ワシントン、リル・B、タイ・ダラー・サイン、バッドバッドノットグッド、ルイス・コール、ザック・フォックスなど豪華キャストがクレジットされています。

ベースのテクニックはもちろん、Drunkとは異なった陰の側面が楽しめるのも魅力の一つです。

29. Soccer Mommy「color theory」


2年振り2作目となるスタジオアルバム「color theory」は、大きく分けて3つの色がコンセプトとなっています。

青は悲しみや憂鬱、黄色は病、灰色は虚無感、喪失感を表現していて、メロディアスな楽曲とは裏腹に心の陰の部分にスポットを当てている楽曲が多いです。

28. Haim「Women In Music Pt.ⅲ」


ロサンゼルスの3姉妹による3rdアルバム。アルバムのジャケットやMVは家族ぐるみで親交がある世界的な映画監督、ポール・トーマス・アンダーソンが撮影しているのも話題を呼びました。

「このアルバムの大きなテーマは悲しみを自覚してアグレッシブに駆逐すること」と語るダニエル・ハイムの言葉にあるように、悲しみや絶望などの負の感情も煌びやかなインディー・ポップに昇華されています。

27. RTJ4「RUN THE JEWELS」


Company Flow のメンバーであるEl-PとKiller Mike によるアメリカのヒップホップデュオ、Run theJewelsによる4作目「RTJ4」

政治的なメッセージが象徴的な今作品はBlack Lives Matterムーブメントの最中に前倒しでリリースされた。怒りに満ち溢れていながらも、骨太なヒップホップサウンドは健在で、純粋にかっこいいと思える一枚。

26. RINGO DEATHSTARR「RINGO DEATHSTARR」


前作から約5年振りにリリースされた4枚目のアルバム。

RINGO DEATHSTARRの代名詞的なマイブラ直系の轟音シューゲイズと浮遊感のあるメロディーは健在で、更にサイケデリック感溢れる幻想的なサウンドで更に洗練された印象を受けました。

今までは少し荒削りなポップなシューゲイザーというイメージでしたが今作で「Isn’t Anything」とコクトー・ツインズを足したような、本格シューゲイザーへと成熟したような1枚です。

25. Childish Gambino「3.15.20」


日本でも知名度の高いグラミー賞4部門を獲得の2018年の「This Is America」以降初めてのアルバムです。

アルバムのタイトルは本作が初めて公開された日付で、アルバムの収録曲には冒頭から再生した時の再生時間がタイトルになっていることからも、アルバムを通して一つの作品として仕上げていることが強く感じられます。

抽象度の高い歌詞とヒップホップ、ファンク、エレクトロニカ、など様々な要素を包含していながらも全編を覆うダークさに純粋な音楽に対する遊び心と知性を感じられて、今年リリースされた作品の中でもトップクラスに好きです。

24. Four Tet「Sixteen Oceans」


キエラン・ヘブデンのソロ・ユニット、Four Tetの2017年の約2年半ぶり10枚目となるアルバム。

恍惚とするようなエレクトロニカサウンドとダンサンブルなビートが楽しめる楽曲から、煌びやかなシンセが紡ぎ出すアンビエントな楽曲もあり、全編を通して非現実的な美しさがあります。

23. The Lemon Twigs「Songs for the General Public」


インディーロック好きはもちろん、クラシックロック好きのリスナーからも支持されるThe Lemon Twigsの3枚目。

今作はトッド・ラングレンのような70年代ポップスが色濃く出ているようなアルバムなので、その時代の音楽が好きな人には刺さると思います。もちろん彼らの少し奇抜なポップセンスも要所要所に感じることができます。

22. Vulfpeck「The Joy of Music, The Job of Real Estate」


ロサンゼルスのミニマム・ファンクバンド、Vulfpeckの5枚目となるスタジオアルバム。

既に発表されていた楽曲やビートルズのSomethingをはじめとする有名曲のカバーも多いですが、多幸感に溢れて方の力をふっと抜きながら聴くことができる1枚です。既発曲多めですが、5曲目「LAX」ではVulfpeckの幅を感じられるような新しさも楽しむことができます。

21. Real Estate「The Main Thing」


アメリカはニュージャージー出身の5人組バンドReal Estateの3年振り5作目となるアルバム。

USインディーシーンを牽引するReal Estateの新作は、リズムマシンの導入やパーカッション奏者の参加など新しい試みを取り入れつつも、彼ららしいノスタルジックで綺麗なメロディーを楽しむことができる1枚です。

以下はbeatinkに掲載されていたインタビューの引用です。

このアルバムに全身全霊を込めて気づいたのは、人の心を打つ音楽作りこそが僕らにとってのカタルシスだということ。『The Main Thing』(大事なこと)は、自分のインスピレーションを追いかけること。そして周りの人々にもそうありたいと思わせるような憧れになることだ。このアルバムが自身や互いに対しての決意を新たにするきっかけとなってくればいい。僕らにとってそうであったように。
-Alex Bleeker (Real Estate)

20. Tycho「Simulcast」


グラミー賞にもノミネートされた2019年の「Weather」から半年後にリリースされた6枚目のアルバム「Simulcast」

歌へと向かった前作「Weather」と対になる作品として位置付けられている今作はインスト曲を中心に展開されていきます。

前作を締め括った「Weather」を一曲目に持ってくることで今作の出発点とし、さらに新しい景色を見せてくれることを予感させる構成や、ジャケットのような自然と戯れていた子供の頃を想起させるような、ノスタルジー溢れるシンプルかつ繊細なエレクトロニカが魅力です。




19. Sufjan Stevens「The Ascension」


Sufjan Stevensの8枚目のスタジオアルバム。

最高傑作の評価も高かった両親の名前を冠した前作「Carrie & Lowell」に続くアルバムで、今作はルーツに立ち返った前作と比べるとフォーキッシュなアプローチではなく、全体的にダークなエレクトロニック・ポップなサウンドに仕上がっています。

全貌を理解できないとさえ思ってしまうSufjan Stevensの作品ですが、壊れそうで繊細な楽曲と彼が感じているであろう疎外感が滲み出ているところにひたすら引き込まれ、心を打たれます。

18. No Age「Goons Be Gone」


ロサンゼルスのノイズ・ロックデュオ、No Ageの5枚目のスタジオアルバムです。

初期の頃のSonic Youthが好きな人はきっと1曲目「Sandalwood」で心を摑まされること間違いなしです。

ガレージやパンク全開の衝動的な楽曲からアートのようなノイズを楽しむことができる楽曲までNo Ageの魅力が詰まったアルバムだと思います。

17. Yves Tumor「Heaven To A Tortured Mind」


セカンドアルバム「Serpent Music」が世界的に高い評価を受けたYves Tumor(イヴ・トゥモア)の新作。

Yves Tumorの実験性が存分に発揮された名盤です。

サイケロックやソウル・ファンクなど様々なジャンルが融合し、どこかちぐはぐに感じるような違和感さえも芸術的に感じます。

16. The Weekend「After Hours」


80年代ポップスをThe Weekendらしいダークでメロウなサウンドで現代に蘇らせた4枚目のアルバム。

ドラッグや恋愛に溺れた、破滅へと向かう享楽的な男性が描かれている曲が多いですが、だからこそ4曲目「Scared To Live」の「So don’t be scared to live again」のようなフレーズが決して大袈裟なものではなく、同質効果的なものとして心にすんなり入ってくるのも大きな魅力です。

15. Pinegrove「Marigold」


Rough TradeからリリースされたPinegroveの3枚目のスタジオアルバム。

「Cardinal」(2016年)は赤、「Skylight」(2018年)は青、そして今回の『Marigold』が黄色で「三原色を参考に「色」を大切にした作品群」だとエヴァン・スティーヴンス・ホール(Vo/G)は語っています。

年中咲く花ではない「マリーゴールド」をタイトルにすることで、咲くことができる自分とそうでない時期の自分という二面性を表現した今作は、温かくもどこか影のあるアルバムです。

特にその「陰」の部分が感じられる楽曲として5曲目の「Moment」で動物を車で轢いてしまって、道路に転がり落ちて叫び出してしまう出来事が描かれているのが印象的です。直球なインディーロックで、エモ好きならドストライクにヒットすると思います。

14. マック・ミラー「Circles」


2018年の9月に亡くなったラッパーの遺作。

元々生前最後の作品である『Swimming』の姉妹作としてリリースされるべく制作が進められていて、フィオナ・アップルやカニエ・ウェスト、レディー・バードなどの映画音楽も手掛けるジョン・ブライオンが完成させました。

アルバム名と同名のオープニング・トラック「Circles」の歌詞にもあるよう、何も変われない自分自身に対する迷いや苦悩が吐露されているような非常にパーソナルな内容となっています。

And I cannot be changed, I cannot be changed, no
俺は変われなかった、俺は変われなかったんだ

Trust me, I’ve tried
信じてくれ、努力はしたんだ

I just end up right at the start of the line
結局また俺はこの道のスタート地点に戻ってきた

Drawin’ circles
円を描くように

13. The Strokes「The New Abnormal」


7年ぶりにリリースされたストロークスの新譜。

初めに解禁されたトラックが「At the Door」だったこともあり、Matthew Bellamyのような艶やかなジュリアンの歌声と、ゲーム音楽のような電子音に「ストロークらしさ」を求めていた身としてはいささか戸惑いもありました。

しかし、その後ストロークスらしさ全開の「Bad Decisions」が解禁され、アルバム全編を通して聴いてみると、バラエティーに富んだアルバムであり、ストロークスが進化した先にあるアルバムだと感じました。愛聴盤です。

12. Mura Masa「R.Y.C」

2017年のデビューアルバム「Mura Masa」が全世界で圧倒的な支持を得たプロデューサーの新作。

「Raw Youth Collage」の略から取られた「R.Y.C」というタイトルは子どもの頃の記憶や体験、ストーリーなどがコラージュされたノスタルジアを感じられるアルバムにしたくて付けられたそうです。

前面を灰色に塗りつぶしたのは現代社会のつまらなさであり、その陰から覗くニコちゃんマークが幼い頃の思い出やノスタルジーを表現しているため今回のシンプルなジャケットになっています。

サウンドは前作とは大きく異なり、「No Hope Generation」を筆頭にポストパンクに色濃く影響を受けた楽曲が多いです。この曲は特に希望の無い現代社会を歌った楽曲となっていることやJoy Divisionの「Disorder」のようなリフがバックに聞こえる箇所があることからも、歌詞の内容にもポストパンク的な内省的な陰鬱さが反映されているように思います。

個人的には音の抜き差しの絶妙なセンス含め、前作の方がバチバチに決まっている感があって好きでしたが、それでも2020年のベストを決めるとなったら外せないアルバムです。

11. GEZAN「狂」


政治批判、社会批判オルタナの代名詞的な存在のGEZANの最新作。全編通してBPM100というこの作品はマヒトゥ・ザ・ピーポーがインタビューでも答えているように「生き物みたいな」怪作です。

「今、お前はどこでこの声を聴いている」という語りから始まり、「この音楽は大人のおもちゃにはならないが、時代のおもちゃになることを要求している」とこれからアルバムを聴く上での「注意事項」を述べる形で始まります。

このアルバムのハイライト的楽曲である「東京」の「政治と言葉にした時一番最初に浮かんだフェイス 安倍やトランプその他諸々のdirty faceではなく花を見て笑う好きな人の顔であるべきだから」のフレーズを聴くと、彼らが語る政治の話が生活の一部としての政治であり、身近な人との日常を守っていくための話であることが分かります。

彼らの思想に共感する/しないとか、正しい/正しくないではなく、そのような政治の在り方を提示したことは「政治」という堅苦しそうなワードだけで「話題にしづらい」というイメージが未だ払拭できない日本において意味があることだったんじゃないかと思いました。

怒りや不満、不安に満ちた2020年においてもきっとこういう音楽に救われた層がたくさんいることも含めて、この激動の一年を象徴するアルバムだったんじゃないかなと思います。

10. Jónsi「Shiver」


Sigur RósのフロントマンJónsi(ヨンシー)の10年ぶり2作目となるソロ・アルバムです。

エリザベス・フレイザー(Cocteau Twins)、Robinらが客演として参加し、共同プロデューサーはA.G. Cookが手掛けています。

前作とは異なるような硬質で重厚なサウンドとヨンシーの甘美な歌声が絶妙にマッチしていて、映画音楽のような芸術的なサウンドスケープを体験できます。

9. Tame Impala「The Slow Rush」


オーストラリアのバンド、Tame Impalaの4枚目のアルバム。

時間が一つのテーマとなっている今作は過去への後悔や感傷、未来への希望や不安などが描かれているものが多いです。

「ノスタルジアは人を中毒にしてしまう麻薬なんだ」とKevin Parkerがコメントしたリードトラック「Lost In Yesterday」では、時間の中を彷徨うにつれてあやふやになってしまう記憶の実体のなさが抽象的に描かれています。

Tame Impalaの楽曲はドラッグのようだと揶揄されることが多いですが、今作も更にトリップ感に溢れ、なおかつ洗練された音楽だと感じました。

8. Caribou「Suddenly」


Dan SnaithによるCaribouの6年振りの新作。

ラップやサンプリングを駆使しハウス音楽の影響などもうかがえる今作は、ミニマムでありながらも温かみのある洗練された音楽を聴かせてくれるアルバムです。

妻の兄弟の死とその姉妹の離婚、実の父の大病といった彼のパーソナルな出来事がどこか影を落としているようにも感じられます。

7. Blake Mills「Mutable Set」


Alabama Shakes「Sound Color」を手掛けたプロデューサーとしても知られるBlake Millsの4枚目のアルバム。

Cass McCombsと共作している曲もあります。

一見なんてことない室内楽的な作品に感じてしまいかもしれないですが、全ての足し算引き算が絶妙です。解像度の高い立体的な音響で緻密に構成されたアンビエントフォークだと思います。このアルバムは是非アナログで聴いて欲しいです。

6. Okkyung Lee 「Yeo-Neun」


韓国人チェロ奏者・即興演奏家のOkkyung Leeの8枚目のアルバム。

Pitchforkからも8.0と高評価を受けた作品で、ハープ、ピアノ、ベース、そして彼女のチェロの繊細な響きを楽しむことができます。

ノスタルジックで音の隙間が心地良い極上のインスト曲が揃った名盤です。

5. THE 1975「Notes On A Conditional Form」


THE 1975の新作。邦題は「仮定法に関する注釈」です。

確か先行公開が「People」→「Frail States of Mind」→「Me & You Together Song」だったので、ジャンルを超越して彼らの音楽が好きなんだなと思いながら楽しみに聴いた一枚でした。

マリリン・マンソンのような「People」、初期のサウンドに近い80年代ポップス色全開の「If You’re Too Shy(Let Me Know)」、ネオアコっぽい「Me & You Together Song」、前作に近いエレクトロニカな「Frail States of Mind」などバラエティーに富んでいます。

個人的に一番グッときたのはエンディングを飾る「Guys」です。バンドメンバーへの愛を語った曲ですが、紆余曲折を経て見えた明るい心象風景がそのまま音になったような綺麗な曲です。ここまでストレートな歌詞の曲は今までなかったんじゃないかと思うので、ベタではありますがバンドへの思いに回帰する構成も含めて好きでした。




4. King Krule「Man Alive!」


ロンドン出身のSSW、King Kruleの3枚目(Archy Marshall名義も含めれば4作目)

サウンドは概ねジャズ、R&B、ダブ、ヒップホップをルーツに唯一無二のセンスでダークに昇華した前作「The OOZ」の延長にありますが、今回はよりポストロックやグランジを楽曲も多いです。

歌詞も堕落した生活や行き場のない不満などをぶつけた無気力で混沌としたものが多く、ひたすらアンダーグラウンドな深みへと引きずり込まれるような怖さを持った作品でもあります。

3. Pet Shop Boys「Hotspot」


通算14作目となるオリジナルアルバムで、「electric」「super」に続くStuart Priceのプロデュース3作目。

前2作と比べても、より彼らのポップセンスが開花した1枚になっていると思います。ベルリンのハンザ・スタジオで録ったのが大きいのか、とにかく曲が抜群に良いし、オープニングトラック「Will-o-the-wisp」のようなダンストラックから柔らかなエレクトロニカ「You are the one」など、抑揚があるのでアルバムとして聴きやすいです。

還暦を過ぎたとは思えない瑞々しくエネルギーと新しい感性に満ち溢れた一枚です。良い意味でPSBはずっと変わらないなと思いました。

2. Avalanches「We Will Always Love You」


2000年に3500以上のサンプリング素材を切り貼りし作り上げたアルバム「Since I Left You」でデビューしたThe Avalanches。その革新的なサウンドは世界中でされ、00年代のダンス・ミュージックの基盤を築きました。

それから16年の沈黙を破り、存在が伝説と化した頃2作目「Wildflower」をリリースし、そしてその3年9ヶ月後リリースされた今作。

MGMT、ジョニー・マー、リオン・ブリッジズ、ブラッド・オレンジ、サナンダ・マイトレヤ(テレンス・トレント・ダービー)、トリッキー、ジェイミーXX、デンゼル・カリー、カレンO、リヴァース・クオモ(ウィーザー)、ピンク・シーフ、Corneliusなど、多彩で豪華なキャストが参加しています。

「絶え間ない波動で表される永遠の愛」をテーマに制作されたアルバムになっています。ジョニー・マーとコラボした「The Divine Chord」(神聖なるコード)では夜空に浮かぶ星を描写しながら、理想と現実を対比させ「君が望んでいた理想の僕になれると思うんだ/僕らが出会う前のように」と歌われるのが印象的です。時間も空間も超えて音楽という宇宙空間に解き放たれたかのような1枚であり、時間も空間も奪われたコロナ禍において愛に溢れた最高のプレゼントのようにも感じた1枚でした。

1. Fontains D.C.「A Hero’s Death」


アイルランド・ダブリン出身のロックバンドFontains D.C.の2枚目のアルバム。

タイトルはBrendan Behan(アイルランドの詩人)の劇の一文からとって付けられたそうです。

無機質で乾燥したポストパンク、無愛想なボーカル、知的で文学的な歌詞、何もかもにグッときたのですが、何よりストレートにかっこいいと思える音楽だったという意味では今年ダントツNo.1です。

「己の為のルールのリスト」のような内容だとGrian Chattenは明かしています。オープニングトラックでは「俺は誰にも依存しない」と何度も繰り返され、「A Hero’s Death」では「人生はいつも空虚なわけじゃない」と繰り返され「冷笑の年だったが、本当の物事は今ここにある」というフレーズで締め括られます。「限られた時間の中で何を手にしたのか」「時間を無駄にしてはいないか」みたいなことばかり気にして息苦しくなった時に聴くと、肩の荷が降りて人生のプラスの側面をを素直に享受できるような気持ちになれました。