The United States Of America「The United States Of America」日の目を見なかった名盤

「The United States Of Anerica」

収録楽曲

アンダーラインは個人的に好きなトラックです!

1.The American Metaphysical Circus

2.Hard Coming Love

3.Cloud Song

4.The Garden of Earthly

5.I Won’t Leave My Wooden Wife for You, Sugar

6.Where Is Yesterday

7.Coming Down

8.Love Song for the Dead Che

9.Stranded In Time

10.The American Way of Love, (Pt. 1 Metaphor for an Olderman/Part-Ⅱ California Good-Time Music/Part-Ⅲ Love Is All)

半世紀以上前、60年代サイケの名盤

67年、あのジョン・ケージの門下生だったJoseph Byrdを中心にロサンゼルスで結成され、68年にセルフタイトル作にして唯一作「The United States Of America」をリリースしたものの商業的には振るわないまま解散。今は電子音楽の先駆けと評価されているけど、アヴァンギャルドな音楽というよりはジェファーソンやステレオラブのような軽快さで聴きやすい曲が多い。女性ボーカルなのもあってヴェルヴェットアンダーグラウンド&ニコな感じも強い。

初めて聴いたときはこんなの聴いていたら立ち直れなくなるんじゃないかと思いながらも、この毒々しくも甘い悪夢のような実験音楽にまんまと虜になってしまった。ギターの代わりにエレキ・ヴァイオリンを使っているところもその幻想美を引き立てているように思う。

 

まず冒頭のThe American Metaphysical CircusはまどろむようなDorothyの声に一気に引き込まれるアシッドでマッドな一曲。歌詞には憩室炎の患者にロンドンデリーの歌を歌わせようとする悪魔のような医者たちが登場する。同性愛者の人たちも病院の「客」として登場することから、異性愛以外の性的嗜好が病気だと思われていた当時の状況がうかがえるし、極めつけはそんな弱者に対して「我々は君たちが必要としてるものを全部持っている」というフレーズ。この曲は医者という権力者を強烈に風刺しているのではないか。

Many customers whose appetites are queer

(多くの同性愛者の客)

Or for those who wish to pay

(もしくは償いたいと願っている人々)

There are children you can bleed

(君のせいで血を流してしまうかもしれない子供たちがいる)

In a most peculiar way

(最も気の狂った方法で)

We can give you all the instruments you’ll need

(我々は君たちが必要としているものを全部与えることができるんだ)

(歌詞参照:Genius Lyrics)

 

このアルバムはアシッドフォークからヘヴィなサイケ、「I Won’t Leave~」のようなThe Beatlesのサージェントにかなり影響を受けている曲もあり、アルバムとしても本当に良く構成されているから中毒性もある。個人的に好きなのは6曲目「Where Is Yesterday」。オルガンのような音を出すキーボードとだんだんと重なっていくコーラスが美しすぎて一気に引き込まれる。他にも「Love Song for the Dead Che」のような60年代のしっとりとしたアメリカンガールポップな曲もあって、この曲は甘いメロディをバックのシンプルなベースとキーボードがしっかりと引き立てていて良い。実験音楽でありながらも基本は良メロで上質なサイケポップなのでどうして当時評価されなかったのか不思議に思う。

まとめ

再発盤の方にはボーナストラックで「Osamu’s Birthday」という曲があって、三味線や芸者の登場場面?みたいな音が入っていて、オサムがJosephの友人なのか手塚治虫のことなのかは分からないけど、日本人としてはなんか嬉しくなってしまう。あとは「The American Metaphysical Circus」のAlternate Versionというアヴァンギャルド色が強くなったバージョンも入っていてこっちもかっこいいのでおすすめ。