映画「ドクタースリープ」あらすじ感想 キューブリックよりもキングの意図を汲んだ作品

キューブリックのシャイニングの世界観が好きな人は肩透かしを食らうかもしれないが、スティーヴン・キングの“主人公vs悪者”な構図が好きな人は楽しめる映画

 

 

監督:マイク・フラナガン

脚本:アキヴァ・ゴールズマン/マイク・フラナガン

出演:ユアン・マクレガー、レベッカ・ファーガソン、カレル・ストリッケン、ジェイコブ・トレンブレイ、エミリー・アリン・リンド、クリフ・カーティス、ブルース・グリーンウッド、ジョサリン・ドナヒュー、ザーン・マクラーノン

 

ドクタースリープはシャイニングの30年後の世界をダークファンタジーテイストで描いた映画。キューブリックのシャイニングがS.キングから酷評されたのに対して、今作「ドクタースリープ」はキングから称賛されている。

ただ、前述した通りキューブリックのシャイニングの世界観を期待して鑑賞するとかなりチープなものに見えるのは避けられないと思う。

シャイニングはホラーテイストのアートだけど、ドクタースリープは主人公vs悪者みたいな構図のファンタジーに近く、芸術性よりも娯楽要素の方が強い

主人公とその仲間が知恵を絞って最後にラスボスと対戦するっていう話の構成はITのようなものをイメージしてもらえたらと思う。



あらすじ(ネタバレ有)

主人公はシャイニングに登場したジャックの息子・ダン(ダニー)。

ダンは幼い頃のオーバールックホテルでのトラウマや自分の持つ死者が見える能力に悩まされアルコール依存症になっていた。自堕落な生活を送り続けていたが面倒見の良い友人・ビリーと出会いアルコール依存から抜け出そうとする。

ある日、ダニーは自分よりも強い「シャイニング」の能力を持つ少女アブラからメッセージを受け取り、能力を使って交信するようになる。そこで出会ったのは子供ばかりを殺し、その「生気」で生きながらえている「トゥルー・ノット(真の絆)」という集団だった。

トゥルー・ノットを率いているローズ・ザ・ハットをオーバールックホテルに呼び出し対戦する。ダンはシャイニングに登場したディック・ハロランの霊から幽霊を脳内の「箱」に入れるという方法を教わっていたため、逆にその霊を解放しローズを襲わせることでローズを殺すことに成功する。

目覚めさせたホテルを燃やしたダンは、幽霊に乗っ取られた体のまま炎に包まれて死んでしまう。

後日、アブラの元に幽霊になったダンが現れる。アブラは自分自身と向き合う決意をし、母親にシャイニングの能力について伝える。

ダンが悩まされていた237号室の浴室の老婆の霊がアブラの元にも現れる(ローズとの対戦でダンが「箱」を解放したため)。アブラはダンと同じようにその老婆を「箱」に閉じ込める。




 

S.キングの意図をよく汲んだ作品

原作を大幅に改変したキューブリックと違い、フラナガンはキングの意向に沿ってファンタジーテイストかつ大衆向けの作品に仕上げている。だからレビューで結構見かけた「キングとキューブリックの架け橋」みたいなのはちょっと違っていて、完全にキングに寄せている。だから、わくわくするような超能力対決もあるしラスボスとの戦いもある。キューブリック要素はほぼない。

 

キューブリック好きにとっては

オーバールックホテルに移動した辺りから怒涛のシャイニング祭りになるのだが、個人的には過剰な演出だと感じた。階段でローズとダンが戦うシーンでジャックとウェンディがオーバーラップするところとか、血が溢れてくる全く同じシーンを見せられたりとか、無理やりシャイニング好きを納得させるためにシャイニングの要素をてんこ盛りにしたみたいで逆に興ざめだった。

キューブリックのシャイニング要素なるものは人間の狂気や霊的なものをアートとして昇華したところにあるわけで、同じシーンの再放送をすることじゃない。キューブリックのシャイニングの続編だとは思わないで見るべきだと思った。

総評

色々言ってしまったけど、娯楽作品としては楽しめるものだったことは間違いない。なんだかんだ正義の側にいる主人公が悪者と戦って勝利、また平和が訪れるみたいな映画はわくわくしてしまう。更なる続編を無理に匂わせて終わる辺りはいかにも商業映画って感じがして嫌だったけど。

結論としてはキングが好きな人は観ればいいしキューブリックオタクというだけなら観ても楽しめないかも…という映画