名作映画「素晴らしき哉、人生!」ー面白くないと感じた理由を3つ考えてみた。

『或る夜の出来事』のフランク・キャプラ監督の名作。1945年のクリスマスイブ。住宅金融会社を経営しているジョージは度重なる不運で自殺しようとするが、そこへ天使が現れ、ジョージがいなかったときの世界を見せる。(Filmarks)

アメリカ人がクリスマスになると必ず観るといわれているこの映画。日本では「誰もが知ってる名作」ほどの知名度ではなさそうだけど、古典的名作の1つに入ることは間違いない。

ラストでは確かに感動もしたし、優しい気持ちになれた。だけど、正直な感想として自分はあまりこの映画が好きになれなかった。これからその理由と考察を書いていこうと思う。




1.ジョージに感情移入できない

幼い頃は世界中を旅することを夢見ていたジョージが良心的な住宅金融の会社を継いで、メアリーという女性とも結婚し、慎ましくも幸せな毎日を送る。利他的で自分たちのハネムーン費用を犠牲にしてでも会社を救うその姿は、ジョージの人柄の良さを象徴している。幼い頃のジョージもハンサムで女の子にモテモテの良き少年といった感じで描かれていた。

でも、中盤のジョージの会社が危機に陥ったシーンからのジョージを見て、この人が善人として描かれていることに納得できなかった。「焦って余裕がない時は周りに当たり散らすけど、根は優しい」そんな人間が本当に存在するのだろうか。

それも当たり散らすのは罪のない妻や子供たち。多少イラつく程度なら分かるけど、発表会のためにピアノを必死に練習している子供を「弾くな!」と怒鳴ったり、電話をかけてきた子供の女教師にまで暴言を言ったり、挙げ句の果てには家の中にあるものまでぶっ壊す始末。それでいて酔っ払い「俺なんて生まれてこなければよかったに決まってる」とぼやく。飲酒運転し、人の家の大事にしている木に突っ込むなんてシーンもある。

確かに迷惑をかけて生きていくのが人間だし、いつでも正しく行動できるわけじゃない。でも、この有様でジョージを純粋な「善」として描き、「情けは人のためならず」なラストになるのはちょっと薄っぺらすぎるんじゃないだろうか。

他人を省みて想像力のある人間は簡単に当たり散らしたりしないというのが現代では大半の人の認識のはずだ。前半では「人のいない屋敷の窓ガラスに石を投げて割れたら願いが叶う」なんていうDQN遊びを女としてるシーンもあり、正直この辺は迷惑なイキリ陽キャを見てるようで胸糞悪かった。とにかくジョージの時代錯誤的な「ヤンチャだけど根はやさしい主人公」という設定に全く共感できなかったのだ。

 

2.この世界と比べたら幸せ!は本物じゃない

身を投げたジョージを助けた二級天使はもし「ジョージがいなかったら」という架空の世界に連れていく。

そこではわかりやすくジョージの知り合いが不幸になっている。幼い頃、自分が助けた弟はジョージがいない世界では死んでいて、ジョージがバイトしていた薬屋の主人は、元の世界では劇薬を間違って届けてしまい刑務所行きになっていて、バーを経営している友人も性悪になっている。

「もうこんな世界たくさんだ!戻してくれ!」そう言い、自分の存在は無意味じゃなかったんだ、生きてるってこんなにも誰かに影響を与えるものなんだ!素晴らしい!となる。この映画の一番のメッセージと言ってもいいかもしれない。

しかし、現実の人々はこんなに誰かの命を助けてはいないのでやっぱりそこで「自分の存在にも意味があった」と思うことはできない。そして何より自分が存在しない世界と自分が存在する現実の比較はフェアじゃない。それはもはや地獄を見せてから現実世界を見せたら相対的に天国のように見えいているだけのことに過ぎないからだ。

架空の世界を覗いて「生きてるって素晴らしい!」となったところでそんな気持ちは長続きしない。現実世界と比較する「もっと酷い世界」の存在がなければすぐに現実にうんざりするだろう。変わるべきは世界の方ではなく自分自身なのだから。タイトルにもなっている「素晴らしき哉、人生」と感覚はまやかしだと、ジョージにもう少し想像力があればすぐわかったに違いない。

3.ラストシーン

最後はジョージの良心的な行いが報われて8,000ドルを町のみんなが「メリー・クリスマス」と言いながら寄付してくれるというラスト。

正直、こんなに色々言っておきながら初めて見たときはこのラストにちょっぴり泣いてしまった。やっぱりこの映画は愛される映画なのかなと一瞬わかったような気がした。ただ、自分には温かすぎたのかもしれない。とにかくあまりにも現実離れしているような気がしてならなかった。

映画がある程度好きな人なら分かる感覚だと思うけど、「泣ける映画」=「良い映画」ではない。クオリティー以前に可愛い愛犬が死んだり、難病の恋人が奮闘の末に亡くなるシーンを見せられたら、当たり前のように泣いてしまうからだ。

黒人の女性がジョージに寄付するときに「まだ独身だけど、離婚する時の費用と思って貯めておいたのよ!」 と言ったりするわざとらしい「人々の温かさの演出」には正直寒気がした。子供はともかく、こんなご都合主義のラストで多くの人が感動し「素晴らしき哉、人生!」となるのが不思議だった。

まとめ

他にもまるで小さい子が見る寓話のようなあからさまな善悪の構図や、中盤まで展開が退屈だったことなど、細かい理由はある。ただ、とにかくこの映画のクオリティー云々というよりもひたすら自分には合わなかったなという感覚の方が大きい映画だった。もともと人物描写含め現実主義な作品にしようなんて思ってないんだろうけど、そのせいで学ぶものが全然ない作品に思える(特にジョージ)。この映画が好きになれなかった理由の一つに時代錯誤的なところもあるからだと思ったので、今の10代の人たちに見せてどんな感想を持つのかも是非聞いてみたいなぁと思った。

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