ヴィジュアル系ロックバンドの金字塔、Janne Da Arc「JOKER」(2005)アルバムレビュー

2007年に活動を休止し、2019年に解散を発表した人気ヴィジュアルバンドの金字塔、Janne Da Arc。

解散の道を進むことになってしまったJanne Da Arcだが、彼らの作ってきた楽曲の輝きは消えることなく、解散して1年以上経った今でも根強い人気を誇っている。

今日は、そんな彼らが2005年にリリースした6枚目のオリジナルアルバムにして最高傑作「JOKER」について全曲レビューと共に紹介していきたい。

1.in silence

アルバムのトップを飾るのは、不穏な雰囲気のシンセパッドから始まり、激しいギター・ベース・ドラム・シンセが絡み合うミドルナンバー「in silence」。
この曲はジャンヌ初の全編英語の歌詞となっていて、当時このアルバムを買ってきて初めて再生した時の衝撃は凄かった。全編英詞もだが、何よりアルバムの1曲目にここまでヘビーなギターが強調されたゴリゴリなハードロックサウンドを持ってくる彼らのセンスにとても興奮したのを覚えている。ボーカルyasuのハイトーンボイスと低音のコーラスが淡々と歌い上げる妖艶な世界観が本当にグッとくる。

2.ツメタイカゲロウ

ミドルテンポな1曲目に対して、2曲目「ツメタイカゲロウ」はJanne Da Arcの王道とも言えるアップテンポで疾走感溢れるハードロックナンバー。繰り返される印象的なギターリフと手数が多く力強いドラムがリスナーの心拍数を上げること間違いなしの1曲。そこにyasuのクリーンなハイトーンボイスが感傷的で切ないメロディを歌い上げ、そこにメタリックなシンセが絡むまさに往年のファンが求めていたジャンヌを象徴する曲と言えるだろう。サビのメロディはとてもメロディアス且つ情熱的で、一度聞いたら耳に残りつい口ずさみたくなってしまいます。また、間奏のギターソロではかなり複雑なフレーズや速弾きがこれでもかと言う程に散りばめられていて、ギターのyouの演奏力の高さも窺える。Janne Da Arcをもしよく知らない人がいたら、筆者はこの曲を真っ先におすすめしたい。



3.月光花

Janne Da Arcを詳しく知らなくてもこの曲は知っているという方は多いのではないだろうか。「月光花」は2005年にリリースされた23thシングルで、アニメ「ブラック・ジャック」のOPテーマに起用され幅広い層に認知された。オリコンウィークリーランキングでは2位にランクインし、まさにJanne Da Arcの名を世に知らしめた楽曲と言えるだろう。曲調は、ストリングスやピアノを前面に出したスローテンポなロックバラードであり、それでもロックバンドらしい力強さも兼ねている名曲だ。
余談だが、私がこのアルバムを購入してin silenceを聴いた時に衝撃を受けたのはこの月光花の影響が大きいのではないかと感じている。Janne Da Arcはあくまでハードロックのスタイルを貫くバンドだが、ロックバラードナンバーで知名度が上がったことによって少なからずバラードバンドのイメージが持たれることがあった。そんな中でJanne Da Arcが世に向けて出したアンサーがこのアルバムの1曲目のin silenceなのではないかと考えることもできるからだ。明らかにバラードとはかけ離れた曲をアルバムのトップに持ってくることによって「Janne Da Arcはこういうバンドだ」と新規・古参ファン問わず間接的に訴えかけているように思う。

4.D DROP

この曲も疾走感のあるギターが印象的な楽曲だ。これまでのように暗い雰囲気はなく、夢を追いかける全ての人に向けた応援ソングとなっていて、Janne Da Arcの中ではかなりポップな楽曲と言えるだろう。ちなみに「D DROP」という曲名は、この曲のギターのチューニングがドロップDというところから、制作段階での仮タイトルを「ドロップD」とし、それを逆にして「D DROP」というタイトルになったというエピソードもある。

5. HELL or HEAVEN~愛しのPsycho Breaker~

キーボード担当のkiyoが作曲した楽曲。キーボーディストということもあって、シンセがフィーチャーされたトリッキーな楽曲になっているのがこの楽曲の面白いところと言えるだろう。この曲以外にもkiyoが作曲した楽曲は数多くあるが、どれも複雑な転調や不思議な音色を多用して唯一無二な雰囲気の曲を作り上げている。
歌詞の内容はお互い憎らしく思うことはあるのにそれでも離れられない恋心を男性視点と女性視点で歌っているというもの。Janne Da Arcの特徴として、どれだけ曲中にユーモアを取り入れてもサビのメロディはとてもかっこよく分かりやすく且つメロディアスなものが多いので、そこが親しまれるポイントなのかもしれないとこの曲を聞くと思う。

6.仮面

こちらもkiyoが作曲したナンバー。バラードではないが、かなりスローテンポで淡々と進行するJanne Da Arcの中ではかなり珍しい楽曲。
歌詞の内容は、他人に嫌われたりどう思われるのかが怖くて仮面を付けて心を閉ざしてしまった”僕”に対して、”君”が「間違うことや弱いことは悪いことじゃない。痛みや喜び全てひっくるめて生きている意味」なのだと優しく説いてくれるようなものになっている。

7.I’m so Happy

「I’m so Happy」は一転してとても甘酸っぱいポップなラブソングとなっています。愛する人と一緒に過ごしたり抱きしめてキスをしたり、その人の全てが愛おしく感じて抑えきれないくらいの幸福な気持ちが伝わってくる、このアルバムの中では1、2位を争うくらい明るい曲と言えるだろう。綺麗なピアノやコーラスが特徴的だが、Janne Da Arcらしい毒々しさもあり癖になる一曲だ。

8.WILD FANG

kiyo作曲の疾走感溢れるロックナンバー。この曲はカプコンから発売されたアクションゲーム「ロックマンX8」の主題歌に起用されていて、個人的にツメタイカゲロウに続くキラーチューンだと思っている。ギターの歯切れのいいブリッジミュートの音が聴いていて気持ち良く、ハードなだけではなく、後ろでサウンドをまとめるキラキラしたシンセの音色が印象的だ。こういった激しい曲を聴くたびにJanne Da Arcのシンセの重要性を感じずにはいられない。煌びやかで綺麗なシンセが混ざることでロックだけれど重過ぎないマイルドな雰囲気に仕上がっているのだろうと思う。

9.easy funky crazy

アメリカンロックのような雰囲気の楽曲。間奏以外でもギターがかなり手数の多いリフやカッティングを多用していてギターパートのコピーはかなり高難易度だと思われる。ブラスの音やロックオルガンの音色が使われていてジャジーな要素も盛り込まれているのがこの楽曲の面白いところと言えるだろう。

10.Mr. Trouble Maker

ギターのyouが作曲した楽曲。妖しげなシンセとサイレンの音から急に疾走感のあるハードロック調に変化しする。ギターとベースは重低音を中心に進行し、ドラムは2バスを用いたヘビーメタルと言っていいくらい激しい楽曲だ。Aメロ内は全て英詞となっていて吐き捨てるように歌い、Bメロは2小節のみで間髪入れずにサビへ突入。サビも捲し立てるように早口でほぼ怒りにも近い感情を乗せて力強く歌い上げているのが印象的だ。また、楽器全パートが高難度の奏法を使いこなしていて、初めて聴いた当時はしばらく夢中でリピート再生していたことを覚えている。疾走感とヘビーならこのアルバムで一番と言えるだろう。間奏でスラップベースとギターの激しい掛け合いや速弾きが聴けるのもこの曲の見所の一つだ。歌詞の内容も、あることないこと見境なく報道するマスメディアに対する怒りや批判というメッセージ性の強いものになっている。

11.Love is Here

yasu作曲の22ndシングル曲。ラブソングだが、I’m so Happyと比べると少し落ち着いたスマートな印象の楽曲だ。それでもテンポは速く、キラキラしたシンセがこれでもかというくらいに主張してくるのが中毒性がある。サビは一度聴くと忘れられない程キャッチーで歌いやすく、シングル曲の中でもかなり人気のある曲で個人的にもお気に入りの一曲だ。
ちなみに、この曲は前作の5thアルバム「ARCADIA」に収録されている「心の行方」という楽曲のアンサーソングになっている。心の行方は光の当たる世界に行けず絶望の中で苦しみ続けている女性を描いた楽曲となっていて、Love is Hereはその女性に気付いた男性が優しく手を差し伸べ続けているという構図になっているので、是非心の行方と一緒に聞いてもらえるとより深みが増すと思う。



12. 風にのって

この曲はこのアルバムの中では月光花よりもバラード色の強いナンバー。歌詞は、2004年に発生したスマトラ島沖地震の被災者に向けたものとなっていて、津波に巻き込まれて亡くなってしまった方々への鎮魂の思いを込めてyasuが作詞したものだ。涙を誘う悲しげなメロディと世界中の祈りが届くように、哀愁の中にも力強さを感じさせるような曲になっている。

13.ダイヤモンドヴァージン

アルバムのラストを飾るのは、月光花の次にリリースされた24thシングル「ダイヤモンドヴァージン」。月光花がしっとりとしたロックバラードなのに対してこちらのダイヤモンドヴァージンは激しいロックサウンド。冒頭からキラキラしたシンセが鳴り響き、ギター、ベース、ドラムが大暴れするのが気持ちいい。

この曲のシンボルとも言える冒頭からのシンセのフレーズと音色を聞くと、こんな心に残るフレーズを生み出せるなんて彼らは天才なんじゃないかと思う。風にのってでしっとりした後にロックバンドらしく派手に弾けて締めていこうというスタンスも彼ららしくて好きだ。

実は、月光花の後のシングル曲の選曲会にはこの曲とWILD FANGと風にのって等が候補に上がっていたが、シングルにタイアップ曲が続くことでビジネス寄りの音楽活動をしていると思われたくないとのことからWILD FANGが候補から外れ、月光花に続いてバラードのイメージがより強まることを懸念して風にのってが候補から外れたというエピソードがある。結果、ダイヤモンドヴァージンはノンタイアップでリリースされたにも関わらず、売り上げは好成績を収めたのでその戦略は成功したと言えるだろう。



総評

今回はJanne Da Arcの6thアルバム「JOKER」を全曲レビューと共に紹介した。ジャンヌの真骨頂であるハードロックナンバーも多く収録され、綺麗なロックバラードから明るいラブソングまで、彼らの音楽の幅の広さを改めて実感することができるアルバムだったのがお分かりいただけたと思う。過去のアルバムと比べると全体的にやや落ち着いた大人っぽさを感じるが、音作り、メロディライン、伴奏などかなり綿密に練られていて非常に完成度の高いアルバムになっていると言えるのではないだろうか。従来のファンは勿論のこと、新規のファンにもおすすめできるアルバムだ。全ておすすめしたい曲ばかりだが、個人的にはin silence、ツメタイカゲロウ、WILD FANG、Mr. Trouble Maker、Love is Here、ダイヤモンドヴァージン辺りを特におすすめしたい。

余談だが、このアルバムのリリース後も「振り向けば…/Destination」や「HEAVEN/メビウス」といった両A面シングルが発売されていたことから、7枚目のアルバムの制作も進んでいたはずだ。しかしそれらが世に出る前にJanne Da Arcは長い活動休止期間に入り、再始動することはなく後に解散してしまった。そのため、実質このアルバムがJanne Da Arcのラストアルバムということになっている。もうこれ以上彼らの新しい音楽が生まれることはないと分かった後だと、ラストであるこのアルバムに収録されている1曲1曲がより一層強い輝きを放ち始めたように感じる。