Netflix映画「マリッジ・ストーリー」感想レビュー 人生を前に進めるための離婚を描いた名作

スカーレット・ヨハンソンとアダム・ドライヴァーの熱演が光る離婚ドラマ。結婚だけでなくそもそも人間関係のすれ違いや認識のずれについても考えさせられるウィットに富んだ名作!

監督:ノア・バームバック

音楽:ランディ・ニューマン

出演:アダム・ドライヴァー、スカーレット・ヨハンソン、ローラ・ダーン、アラン・アルダ、レイ・リオッタ、メリット・ウェヴァー、アジー・ロバートソン 他

Netflix配給映画でもありアカデミー賞ノミネート作品でもある「マリッジ・ストーリー」(ローラ・ダーンは助演女優賞受賞)。「結婚物語」というタイトルに反して内容は離婚の話です。

監督は「フランシス・ハ」「イカとクジラ」のノア・バームバックで、夫婦を演じてるのは日本でも知名度の高い「スターウォーズ」「パターソン」のアダム・ドライヴァーと「ロスト・イン・トランスレーション」「LUCY/ルーシー」のスカーレット・ヨハンソンの2人。音楽は「レナードの朝」のサントラを手掛けたことでも知られるランディ・ニューマンが手掛けてます。

この話は主に舞台演出家の夫と女優の妻の生活がどのようにすれ違い破綻したのかを描いた離婚ドラマなんですが、女性の自立という時代が直面している問題も包含した社会派映画でもあります。そして何よりもそもそも人間関係というものがすごく微妙なバランスで成り立っているということを改めて考えさせられる映画でした。とはいえ、内容が重くても映画の雰囲気自体はシリアスさがないので、観終わった後はどこか爽やかな気持ちになれます(結婚なんて最悪!みたいな映画ではないです)。

あらすじ① 良いところリスト

画像出典元:「マリッジ・ストーリー」アップリンク渋谷

ニコールの良いところ「人の話をよく聞く。家族の髪も切ることができる。贈り物のセンスが良い。息子と本気で遊ぶ。負けず嫌い。知ったかぶりをしない

チャーリーの良いところ「意志の強さ。几帳面。映画ですぐ泣く。家事が得意。怒りをぶつけても聞き流してくれる。男性にしては珍しく服のセンスがいい。負けず嫌い。子煩悩で良いパパ」

ニコールとチャーリーはお互いの良いところを理解し、愛し合っている夫婦だった。

離婚の相談所で書くようにいわれてきた「良いところリスト」をお互いの目の前で読み上げるように言われるが、ニコールは「私は読まない」と言い怒って出て行ってしまう。結局そのリストは何を書いたのかお互い知らないまま話し合いは終わってしまった。

あらすじ➁ ニコールが離婚を告げるまで

チャーリーはNYに劇団を持つ舞台監督で、ニコールはその劇団の看板女優だった。もともとニコールには女優としてのキャリアがあったため、劇団は彼女の知名度もありどんどん大きくなっていた。

ニコールはLAでテレビドラマの仕事があったため、息子のヘンリーを連れて母と姉の住むLAの実家にしばらく住むことに。チャーリーの劇団もブロードウェイでの舞台が決まったためNYを離れることができなかった。

ニコールはその時もうすでにチャーリーとの離婚を決めており、これからもLAに住んで監督にも挑戦し、誰の言いなりにもならない人生を送ろうと考えていた。

そんなことも知らずNYから家族に会いにLAにやってくるチャーリー。彼は「文芸の助成金がとれたんだ」とニコールに伝える。ニコールはチャーリーを心から祝福し、なかなか離婚の話を言いだせないでいた。

ニコールの姉キャシーが離婚書類をチャーリーに渡すことになっていたが(法律上ニコールは渡せない)、キャシーはチャーリーの前で緊張してしまい、事情を説明できないままただ書類を手渡すだけになってしまう。

予想もしていなかった離婚の話に狼狽するチャーリー。ニコールは「今までとは全く違う生活がしたいの」と打ち明けた。

あらすじ③ NYとLAのすれ違い

ニコールがノラという弁護士を立てたため、チャーリーも弁護士に相談に行くことにした。

しかしヘンリーとニコールが現在LAの実家に住んでいて、息子をLAの小学校に通わせているため、劇団のあるNYにいるチャーリーは不利な立場であることを教えられる。

妻とは話し合いですぐ済むと考えていたチャーリーだったが、弁護士のノラから「親権は100%もらう」と言われて本格的に弁護士を探すことに。

なんとかチャーリーは期限内に人の良さそうな弁護士バートを見つけ、ニコールとお互いの弁護士と4人で話し合うことになった。

そこでチャーリーが知らされるのはニコールがNYに住むのは一時的だと考えていて、チャーリーの仕事にずっと縛られていたと感じていたこと。彼女はチャーリーの「LAでもっと長く過ごす」という約束を信じていたからNYにいただけであり、いつかはLAに住めるものだと信じていた。一方でチャーリーはLAで過ごすのはニコールのドラマの撮影期間だけで、終わればすぐにNYに帰れると思い込んでいたのだった。




あらすじ④ 泥沼化する裁判の結末

話し合いがまとまらず裁判に発展し追い込まれたチャーリーは、当初は相談料も高く傲慢に見えたジェイという敏腕弁護士を雇うことにした。

弁護士が変わったことにより裁判は泥沼化してしまう。チャーリーの浮気をノラが持ち出したかと思えばジェイはニコールの飲むお酒の量の話を始めたりと、相手の粗探しにばかりになってしまったのだ。

あまりにも裁判が殴り合いになってしまったため、チャーリーとニコールは「できるところまで2人で一回話し合ってみよう」と決める。

しかし初めは冷静に話し始めるも、だんだん怒りが抑えられず激しい口論になってしまう。「君なんか死んでしまえばいいんだ!」と、最後にはチャーリーが心にもない暴言を吐いてしまい泣き崩れてニコールに何度も謝る。

結局、捜査員の訪問によりニコールが勝者となった。自宅で開いたパーティーでノラから親権は55:45で、相手がLAにいるときは隔週でニコールの方が会える日が一日多いことを伝えられる。ニコール自身は親権に関しては平等でいいと考えていたが、ノラがそれは認めなかったのだ。

やがてチャーリーがヘンリーに会いに来る日になり、LAを訪れる。そこには新しくカーターという男がいて、相変わらず温かくチャーリーを迎えてくれるニコールの母がいた。

チャーリーはニコールが監督としてのキャリアを順調に始めたことを報告される。家から自分の写真が消えていることにも気が付く。

皆がハロウィンの仮装の準備をしている間、一人残されたチャーリーは部屋からヘンリーが何かを読んでいる声を耳にする。

それはあのとき調停員の前で読み上げられなかったニコールの書いた「良いところリスト」だった。チャーリーはヘンリーと一緒にそれを読んだ。「服のセンスが良く、恥ずかしくない。男性にしては珍しいタイプだ。彼は没頭する性格。歯に何かついていてもさりげなく教えてくれる。劇団員も彼のおかげでみんな仲が良い」

「彼に会って二秒で恋をした。矛盾してると思うけど、私は彼をずっと愛し続けるだろう」という言葉でその手紙は締められていた。

ハロウィンパーティーで疲れ切ってしまったヘンリーをチャーリーは連れて帰る。本当は今日はニコールの番だったが、ニコールがそう勧めたのだった。

ニコールはチャーリーのほどけた靴紐を結んであげて、ヘンリーを送り出す。2人は離婚してもヘンリーの親であり続けなければならないし、そのためにも自分の人生とお互いを尊重するような新しい関係を築き上げようとしていた。

会話によって心情を描く映画

この映画はとにかく会話が多く、誰かがとにかくずっとしゃべり続けている。ニコールとチャーリーがどのような「ズレ」を抱いていたのかも「2人が何を話したか」によってだんだんと明らかになる構成になっていた。

普通は結婚したての仲睦まじい様子と喧嘩ばかりに変わっていく様子を対比させたりして2人の関係の破綻を描こうとするけど、マリッジ・ストーリーは過去の回想シーンや思い出して1人で泣きながら酒を飲む…みたいなシーンはほとんどない。過去の出来事を振り返ってどんな風に話しているのかで2人のすれ違いは描かれている。

象徴的なのはチャーリーは助成金をもらえたことに関して「2人でとったものだ」と言う場面。チャーリーは劇団を自分のものだけではなくニコールのものでもあると考えていた。だからこそチャーリーはNYに住むことが当然であり、ニコールがそれに窮屈さを感じていたことに気が付けなかったのだ。弁護士という代理人の言葉によって2人が何をどんな風に語っていたのかが伝えられ、認識の微妙なズレは初めてお互いに伝わる。

ハロウィンの日に見る2人の変化

離婚調停真っ最中の2人が迎えたハロウィンは、ヘンリーを取り合うようにどの衣装を着せるか、どこで過ごさせるかを争っている。もともとヘンリーは母親っ子なのもあり、ニコールの近所の友人の家でいとこたちとニンジャの格好をしてパーティーをすると決めていた。しかし、チャーリーは劇団の小道具係にフランケンの衣装を調達してもらったのでそれを着て一緒に過ごすことを望んでいたのだ。結局パーティーの後にチャーリーとヘンリーで2人でハロウィンを楽しむということに落ち着くが、ヘンリーは疲れ切っているしチャーリーと2人の「二度目のハロウィン」は夜の街をただ歩くだけになってしまう。

離婚した後迎えたハロウィンを見ると、ニコールは自分の番にも関わらず疲れているヘンリーのことを考えてチャーリーに連れて帰ることを勧めるし、チャーリーも「今日は君の番だから」と言い断ろうとする。裁判中はお互いが親権のために必死になっていたが、2人は関係の解消を通してお互いとチャーリーのことを思いやるように変わっていったように思えた。




根強い男性社会への風刺

ニコールの弁護士ノラがこんなことを語る場面がある。「父親は不完全で許されても母親はダメなのだ」と。「不器用な父親は容認されても、女は社会的にも宗教的にも違う。ユダヤ教やキリスト教の根底には聖母マリアがいて、彼女は処女のまま子供を授かった。母は子どもを揺るがぬ愛で助け、死んだときは遺体を抱いた。神は父であり、姿を現さない。女は常に高いレベルを求められる。最悪だけどそういうものなの」

チャーリーが決して亭主関白的な自分勝手な男性のアイコンのようなキャラクターでは決してなかったけど、未だに残るそのようなジェンダーバイアスは確かにあるし、ノラはそんな女性たち声を代弁する役割を果たしていたように感じた。

まとめ

マリッジストーリーは「結婚物語」というタイトルだけど人と人のすれ違いや関係性の多様な在り方を描いた映画で、とにかくアダム・ドライヴァーとスカーレット・ヨハンソンの熱演が光る良作だった。離婚という結末を迎える結婚生活もあるかもしれないけど、それが必ずしも後ろ向きなものではないこと、離婚という選択を受け入れるという愛情もあること、それでもやっぱり破綻したものは修復できないということ、修復は無理でも新しいものを築くとこはできるということ…色んなことを考えさせられる映画だったけど、終わった後には新しい人生の予感に清々しい気持ちにもなれる素敵な映画だった。

▽サントラ

▽チャーリーがバーで歌ってた曲

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