三島由紀夫のおすすめ作品10選を紹介。誰よりも日本の未来を見ていた天才作家

戦後の日本文学界を代表する作家、三島由紀夫。

三島由紀夫と言えば「諸君は武士だろう」と自衛隊に決起を呼びかけた演説や、割腹自殺した最期、金閣を燃やすまでを描いたセンセーショナルな代表作「金閣寺」など様々なイメージのある作家だと思います。

過激な思想のイメージも強いかもしれませんが、小説は世界的にも評価が高く、一度は読んでおきたい作家の1人です。

今回はそんな日本の将来を案じながら、格調高い文章で数々の名作を残した三島由紀夫のおすすめの作品を10選紹介します!



金閣寺

金閣を焼かなければならぬ

1950年の金閣寺放火事件をモデルにした三島由紀夫の代表作「金閣寺」。

金閣の美しさに取り憑かれた溝口という少年が金閣を燃やすという行動に至るまでを描いた話になっています。

溝口は容姿にも恵まれず、吃音持ちであり、劣等感や苦悩を抱えながら金閣にだけ美というものを見出すようになります。

少年だった彼が「私は歴史に於ける暴君の記述が好きであった」と語るのも印象的で、社会から疎外された人間が内に秘めた攻撃的な思想の断片が生々しく描かれている不朽の名作です。

仮面の告白

好奇心には道徳がないのである。もしかするとそれは人間のもちうるもっとも不徳な欲望かもしれない。

三島由紀夫の2作目の長編小説「仮面の告白」

少年期に自分が人とは違った性的嗜好を持っていることに気づき始め、傷付き、悩む1人の青年の赤裸々な姿が描かれている話です。

主人公の”私”は男らしく荒々しい気性の学友に恋をしたり、友人の妹・園子と文通を続けるような関係になるも性欲を全く感じられないことに悩みます。

幼少期は病弱だった三島由紀夫の自伝的要素の強い小説でもあると言われていて、「男らしさ」に対するコンプレックスと憧れ、そして執着のようなものが感じられます。

潮騒


伊勢湾に浮かぶ「歌島」という小さな島で描かれる恋愛物語です。

この小説は「金閣寺」や「仮面の告白」に比べると読みやすいので、まずは易しいものから読みたいという方におすすめします。

漁師をしている18歳の青年・新治は村の有力者の娘・初江に恋をします。

2人の恋愛の顛末だけ見ると至ってシンプルな物語に思えるのですが、実はラストに純粋な恋愛物語としては違和感を覚える文章が入っていて、そこがこの小説の奥深さを出しています。

瑞々しい恋愛要素だけではなく、力強い若者と年頃の女の子の傲慢さも垣間見えるところも面白いです。

行動学入門

どんな別れ方をしようと世間体が悪いことに変わりはない。それが証拠に結婚式というものはあっても離婚式というものはない。

表口から堂々と入ってきた二人が離婚となると裏口からコソコソということになる。どうせのことなら、結婚式と同じお客をもう一度同じ会場へ招待して、同じご馳走を出してフィルムの逆回しのような式を行い、ウェディングケーキを半分ずつ持ってきてピタリと合わせて仲人のかわりにお離れ人という人の立ち会いでお互いにリングを取り返し、平服で別々の出口から盛大なる拍手に送られて行ったら良さそうなものだが、そんな会をやったという話は聞いたことがない。

「行動学入門」は小説ではなく三島由紀夫の人生観を描いたエッセイです。

様々な物事の美しい終わり方についての考えが書かれた「おわりの美学」は痛快で面白く、もう発売から50年以上も経っているにも関わらず今でも新しい考え方と出会えます。

冒頭で引用したのは「結婚のおわり」で書かれている内容で、「大々的に結婚するくらいなら離婚する時も離婚式でもしたらどうだ」ということがひたすら書かれています。

笑い話のようですが、最近では実際に「離婚式」を行う夫婦もいるようなので、そ本当に三島由紀夫の考え方は時代を何年も先取っていたのかもしれません。

テーマは戦争や政治などの重たいテーマに留まらず、日常的なものも多いので、これはかなりおすすめしたい一冊です。



音楽


精神分析医の主人公が不感症に悩む女性の診察を通して、彼女の本当の姿や深層心理に迫っていくという話。

タイトルの「音楽」は、「性的快感を感じること」の隠喩として使われていて、女性が「私、音楽が聞こえないんです」と主人公に告白しています。

心理劇的な構成になっているため、物語の展開の純粋な面白さと人間心理の複雑さに切り込んだ三島由紀夫の文章に引き込まれます。

三島由紀夫の小説の中ではかなり特異なテーマですが、文章自体は比較的平易で読みやすいです。

美しい星

「みんな見るがいい。人間の街の見納めだよ」

宇宙人を題材にした三島由紀夫の中では特異な小説の一つ「美しい星」

2017年に「桐島、部活やめるってよ」の吉田大八監督による映画化が記憶に新しい人もいるかもしれません。

SFをモチーフにしながらも、小説のテーマは「人間とは何か」というところに切り込んでいます。

ある家族が宇宙人としての自己を自覚し、そこから社会に対してどう向き合っていくのかを描くことによって、生き方について再考させられる示唆に富んだ内容になっています。

午後の曳航

「血が必要なんだ!人間の血が!そうしなくちゃ、この空っぽの世界は蒼ざめて枯れ果ててしまうんだ」

大人への失望と反抗心から生まれた思春期の青年たちの狂気を描いた傑作「午後の曳航」

母親の房子と二人暮らしの主人公の登は、鍛えられた肉体を持つ船乗りの男・竜二に強い憧れを持っていました。

そして、竜二のことを「英雄」と呼ぶようになり、母親の房子と竜二が関係を持つようになると誇らしげに同級生に自慢します。

しかし、房子と竜二が結婚し、海の男だった竜二がブティックを手伝い経営を学んだりするようになると、「英雄」が「俗物化した」と感じてしまうのでした。

そして彼は級友たちと共に竜二を「処刑」する計画を立てる、というのが物語の大筋です。

少年たちの狂気と三島由紀夫の「男らしさ」に対する美学が感じられる作品になっています。

豊饒の海


豊饒の海は第1巻「春の雪」、第2巻「奔馬」、第3巻「暁の寺」、第4巻「天人五衰」と、全4巻にも及ぶ大作です。

ちなみに第4巻「天人五衰」の最後に『「豊饒の海」完。昭和四十五年十一月二十五日』と書いて、そのまま市ヶ谷自衛駐屯地へと向かい、割腹自殺をしています。

つまり、三島由紀夫が作家人生の中で最後に仕上げた作品です。

第1巻「春の雪」は松枝侯爵家の1人息子清顕と、綾倉伯爵家の娘聡子の話です。

2人は逢瀬を重ねるも、すれ違ってしまっている時に皇族から持ちかけられた婚約に聡子が承諾してしまうところから始まります。

ところが、婚約しているにも関わらず清顕は聡子に会いに行くことを続け、妊娠させてしまうことによって2人の関係は両家に知られてしまうのでした。

話の大筋は恋愛ですが、その中に仏教や哲学の思想が織り交ぜられていることによってより奥深さを感じられます。



鹿鳴館


三島由紀夫が書き下ろした戯曲「鹿鳴館」。

欧化政策の一つとして建てられた西洋館である鹿鳴館を舞台に、愛憎と陰謀が渦巻いた4人の男女の悲劇的な運命を描いたものになっています。

欧米化した日本を見てもらうために建てられた鹿鳴館と、権力や愛情へ執着する人々の上辺だけ取り繕う様がシンクロしているところも面白さの一つです。

不道徳教育講座


三島由紀夫のエッセイ集「不道徳教育講座」

三島由紀夫の思想の断片がユニークな文章で描かれていて、「不道徳」がなぜ必要なのかが説かれています。

ユーモアに溢れていながらも現代にも通ずる生き方を説いた内容になっていて、三島由紀夫の内面を垣間見れる一冊です。

真面目に生きているが故に悩み、もがいている多くの人々にとっておすすめできます。




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