【耽美派の頂点】谷崎潤一郎のおすすめ小説10選をランキング形式で紹介!

谷崎潤一郎は明治末期から昭和中期まで活躍した小説家です。

耽美派の中心人物として教科書で習った方も多いのではないでしょうか。

筆者自身はその文体の美しさとその対極にあるかのような人間の生々しさのようなものに惹かれ、大学時代に三島由紀夫と並んで全作品を読んだ数少ない作家でもあります。

今回は全作品読んだ上でおすすめの作品を1〜10位までご紹介します。谷崎潤一郎の小説の読み方や特徴についてもまとめたので是非参考にしてみてください!

谷崎潤一郎とは

谷崎潤一郎は明治19年7月24日生まれです。

第2次「新思潮」発表の「刺青」が永井荷風に激賞され、耽美派の作家として文壇に認められることになります。

耽美派とは、明治の終わりに西洋から輸入された文芸思想で、「美」をとにかく追求した作品のことです。

現実をありのままに描写する自然主義と対立する反自然主義とも言われたりします。

退廃的という言葉や官能的という言葉がよく使われ、客観的な善悪や法的な是非ではなく、「美しい」というところに究極までにこだわった文学です。



谷崎潤一郎のおすすめ小説1位〜10位

10位:少年

「何でもあたしの云う通りになるだろうね」
「………」私は真っ蒼な顔をして、黙って頷いた。(本文抜粋

10代の少年少女が背徳的な「遊び」にはまっていく姿が描かれた短編。

登場人物は私、信一、仙吉、光子の4人です。

4人はよく遊んでいましたが、彼らには不思議な関係性があり、学校と信一の屋敷内では彼らの関係性は一変してしまいます。

学校ではガキ大将は仙吉でおとなしいタイプの信一という2人ですが、仙吉は屋敷内では信一の言うことをなんでも聞き、理不尽な仕打ちに耐えるほど大人しく、信一は友達を縛って顔を汚したりするなどの横暴な振る舞いを見せるのでした。

危険な遊びになぜか恍惚としてしまう少年少女の姿は妖しく、美しさを感じさせます。

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9位:陰翳礼讃

陰翳礼讃は谷崎潤一郎の随筆です。

谷崎潤一郎は西洋文化を高尚なものとして過剰に持ち上げ取り入れられることや、東洋文化を「下」とみなす日本人の心理については作品中でもよく触れています。

この随筆はそんな谷崎潤一郎が思う日本の文化の奥深さや美意識について考察したものがまとめられています。

明治時代初期は「富国強兵」「脱亜入欧」という言葉が掲げられ、西洋文化を積極的に取り入れようとした時代ですが、それに対する反発意識として自分たちの文化に対する誇りのようなものを感じられるのが面白いです。

内容は堅そうに思われてしまうかもしれませんが、谷崎潤一郎の作品の根底にある「美」や「文化」に対する芸術的な価値観を知ることができるので、作品に対する理解を深めたい方や芸術に興味がある方には是非読んでもらいたいです。

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8位:瘋癲老人日記

70代半ばにもなって、息子の嫁・颯子を溺愛する卯木督助という老人が主人公で、彼の被虐性愛や性倒錯が日記の形として綴られています。

老人は彼女を男性として愛せない代わりに、金を出し惜しみなく与え、それに快感を感じるようになります。

そしてそんな老人を見て利用できると考えた颯子の要求もまたエスカレートしていくのでした。

タイトルの瘋癲(ふうてん)とは「精神が正常ではない人」のことを指します。

瘋癲老人とそれを利用する悪女の関係性に谷崎潤一郎ならではのマゾヒズムが描かれています。

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7位:蓼喰う虫

谷崎潤一郎の結婚生活を反映した小説「蓼喰う虫」。

離婚にまでは踏み切れない冷め切った夫婦の心の機微が描かれた小説で、要と美佐子の2人は夫婦ですが、それぞれ別の恋人がいてお互いにそれを黙認しているような状態です。

しかし息子の弘がいるので離婚はせず、弘の前ではそれぞれ父親・母親を演じています。

谷崎潤一郎は自分の妻を友人で作家の佐藤春夫に「譲る」という事件で世間を騒がせました。

そのため、その時の実際の2人の関係性がモデルになっているのではないかと言われています。

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6位:細雪

「細雪」は昭和11年の秋から昭和16年春までの大阪を舞台に、蒔岡家の四姉妹の日常を描いた小説です。

代表作の1つで映画化もされました。

船場言葉という、元々は大阪の商人が使っていた公家言葉に影響された言葉が使用されていることによる上品さもこの作品の魅力になっています。

30歳を過ぎても未婚の主人公・雪子は四女の妙子と間違われて駆け落ちしたことが新聞に掲載されてしまったことで縁談が減ってしまいました。

そこから四姉妹の人物や恋愛事情が美しい文体で描写され、日本的な文化に触れることができる名作です。

それぞれの姉妹のキャラクターが見事に書き分けられていて、人間味を感じられるため、飽きずに読み進めることができます。

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5位:秘密

主人公の「私」は普通の生活では満足できなくなってしまい、奇怪な出来事を求めて下町の真言宗の寺に隠居を始めます。

その中で魔術や催眠術などの本を読み漁り、ウイスキーを飲みながら暮らしていた「私」ですが、秘密を持つということに魅了され、ついには女装まで手を出すようになってしまいます。

そして、女装した姿で昔関係を持っていた女性と遭遇してしまいます。

そこからその女性と奇妙な関係が始まり、「私」はその女性に何度か会いに行くことになるのですが、住んでいるところがバレたくないからと毎回目隠しをさせられます。

目隠しをさせられながらも逢瀬を続けていくうちに、女の「秘密」が何なのかをどんどん知りたくなる「私」の行動はエスカレートしていきます。

「秘密」がもたらす「知りたい」という衝動と、どんどん刺激を求めていく「私」の心理描写が読み応え抜群です。

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4位:卍

1928年から刊行された谷崎潤一郎の長編小説。

裕福な家庭の娘で、弁護士の夫を持つ園子は、同じ日本画の学校に通う光子という女性と仲良くなります。

光子という美しい女性に園子はだんだん惹かれ、夫がいるにも関わらず交際へと発展してしまうのでした。

しかし光子には綿貫という交際している男性が他にもいて、さらには園子の夫である孝太郎も光子と関係を持ってしまい…と、人間関係が光子を中心に卍模様に複雑に絡み合っていくというお話です。

光子という女性に取り込まれ、破滅へと向かっていく夫婦の様子や、夫婦が1人の女性を奪い合うという歪な関係性が面白いです。

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3位:痴人の愛

よく世間では「女が男を欺す」と云います。

しかし私の経験によると、これは決して最初から「欺す」のではありません。

最初は男が自ら進んで「欺される」のを喜ぶのです(本文抜粋)

1924年に連載開始された谷崎潤一郎の代表作。

生真面目なサラリーマン・河合譲治が、カフェで見た美少女・ナオミを引き取って自分の妻にするというお話です。

譲治はナオミの貞操観念のなさや無知を美しいものとして捉え、育てる側だった譲治がどんどん翻弄されだんだんと身を滅ぼしていく様子が描かれています。

この小説から「ナオミズム」という言葉が誕生し、自由奔放で魔性の女性に大して使われるようになったという経緯もあります。

繊細な恋愛心理の描写と谷崎潤一郎のマゾヒズムがふんだんなく発揮された名作です。

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2位:刺青

「己はお前をほんとうの美しい女にする為に、刺青の中へ己の魂を打ち込んだのだ」(本文抜粋

谷崎潤一郎の処女作でもある短編「刺青(しせい)」

主人公の刺青師・清吉の性的倒錯やフェティシズムを描いた作品で、彼は肌を針で刺されて身悶える姿に愉悦を感じてしまいます。

清吉は「光輝ある美女の肌を得て、それへ己れの魂を刺り込む事」という宿願があり、美女の背中に蜘蛛の刺青を彫ります。

谷崎潤一郎の小説の中でも特に「妖艶」という言葉が似合う小説で、美女の背中に掘られた蜘蛛が動いているように見える描写などがとにかく妖しく美しいです。

また、処女作にしてフェティシズムが文学として華麗に昇華されている点でも高く評価されている名作です。

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1位:春琴抄

「お師匠様、私はめしい(盲目)になりました。もう一生涯、お顔を見ることはござりません」(本文抜粋

第一位は「春琴抄」です。

好きな(尊敬する)女性のために自分の目に針を刺して盲目になることを選ぶ男の話で、大学時代初めて読んだ時にあまりにも衝撃的でした。

容姿端麗で三味線の才能のあった春琴は9歳で失明しましたが、世話係の佐助がいました。

わがままな彼女の世話をすることが生きがいだった彼は、顔に火傷を負った春琴が「ただれた顔を見せたくない」と言うのを聞いて、自分の両目を針で失明させてしまいます。

ポイントは春琴も失明しているので、佐助がそんな思いまでして自分の目を失明させたところで春琴には確かめようがないという点です。

つまり、口だけなら「自分も目が見えない」のだと嘘を吐くこともできる状態で、本当に自分の目を潰してしまうという行為はあまりにも不気味で真っ直ぐな忠誠心が現れています。

グロテスクで道徳的には正しいとは言えない行為ですが、耽美派の代表作にふさわしい究極の「マゾヒズム」を描いた小説と言えるのではないでしょうか。

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これを知ると一気に面白い!谷崎潤一郎の小説の特徴3選

東洋と西洋の関係性

西洋文化を積極的に取り入れようとしていた時代を生きていたということもあり、元々谷崎潤一郎は西洋文化へと傾倒していました。

耽美派というジャンルがそもそも西洋で発展して日本に入ってきた文芸思想の1つです。

ですが、陰翳礼讃で触れられていたようにだんだんと日本の文化が持つ美しさに傾倒していくようになります。

作品でも「痴人の愛」でもナオミが西洋風なファッションを取り入れ、恋愛にも自由奔放な女性として描かれていて、そんな女性に生真面目な(東洋風な)主人公が屈服していくという内容になっています。

恋愛やマゾヒズムの作品としても面白いのですが、こういった東洋人に当時根付いていたコンプレックスのようなものが恋愛を通して描かれているところにも注目してみると面白いです。

マゾヒズム

やはり谷崎の作品と言えばキーワードとなるのはこの言葉です。

特に一般的には屈辱的だと言われる物事に対して愉悦を覚える人々の心理が緻密に描写されています。

1位で紹介した春琴抄はその極地とも言える作品です。

相手のために自分の両目に針を刺すことでさえ厭わない主人公は、春琴の願望を叶えてあげるということこそが何よりの喜びになっていました。

そしてそんな人々の破滅へと向かっていく様が文学的に描かれているところに非現実的な美しさを感じられずにいられません。

エンタメ要素が強いので読みやすい

意外かと思われるかもしれませんが、谷崎潤一郎は現代にも通じるミステリーやサスペンス、戯曲などを執筆しています。

そのため、どんでん返し的な展開に驚かされたり、登場人物の持つ秘密に驚かされたりするような作品が多いです。

純文学というとストーリーの娯楽性よりも文学性に拘った作品を連想するかと思いますが、文体の美しさに対して内容はエンタメ要素多めで読みやすいと思います。

作品名を挙げると展開が目まぐるしく変化して驚かされる卍や、痴人の愛は特に読みやすさの意味でもおすすめです。

春琴抄をはじめとする一部の作品はPrime ReadingでPrime会員の方は0円で読めるので是非読んでみてください。

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