【元レコード屋店員が解説】レコードのせどり・転売は儲かるのか

ニッチな市場でありながらも根強い人気があるレコード。

正直音楽好きからすると限定品が転売ヤーから大量に買い占められるのは困るのですが、今回は副業としておすすめできるのかどうか、某レコードチェーン元店員の筆者ができるだけ客観的な視点で解説していきます。

結論から言うと、おすすめできる人とおすすめできない人がいますが、副業として多くの人にはおすすめできないと言えます。



レコード転売をおすすめできない理由

冒頭でおすすめできる人とおすすめできない人がいると紹介しましたが、レコードの転売は音楽好きでないと難しいです。

これは、どのアーティストのどのアルバムが名盤だと評価されているのかなどの膨大な情報を身につけるのが音楽好きでないと難しいからです。

音楽好きはアルバム単位で聴く人も多いので、名盤扱いされてるアルバムは高騰しても、そうではないアルバムは値段が原価割れするなんてことがよくあります。

例えば、90年代の筆者の好きなバンドにスーパーカーというバンドがいるのですが、彼らの生産限定盤の相場は現在「JUMP UP」が約3,800円、「HIGHVISION」が約25,000円で取引されています。

発売当時の値段はどちらも4,400円(税込)です。

スーパーカーが好きな人であれば、スーパーカーの名盤といえば「スリーアウトチェンジ」か「HIGHVISION」、次に人気がありそうなのが「Futurama」で…みたいな認識が何となくあるのですが、これを勉強して覚えるのは音楽好きでなければ苦行だと思います。

レコード転売のメリット

おすすめできない理由をいきなり紹介してしまいましたが、とはいえ、レコード転売には副業として優れてる部分もあります。

1. 低コストで始められる

レコードの転売は少ない金額で始めることができます。

新品のレコードの相場が大体3,000円〜8,000円くらいなので、まずは自分が分かるアーティストの人気そうなレコードを何枚か買ってみる、といった始め方ができます。

数枚だけ買うような場合は、専用のラックがなくても隙間のスペースで保管できるので、そのコストも必要ありません。

ただ、保管にあたっていくつか気を付ける点はあるので、レコードの保管方法が気になる方は下記の記事も参考にしてみてください。

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レコード屋店員が教えるレコード収納方法・アイデア7選を紹介

2. 高額になった時の利益が大きい

レコードの場合、抜けた時の金額が結構大きいです。

しっかり狙えば元の値段が4,000〜5,000円のものが2万円くらいに上がる、といったケースはそこまで珍しくありません。

元の金額の4,5倍になるところが狙いやすいと考えると、かなり投資対効果は高いと言えます。

また、もっと高いものであれば何十万という世界になります。

特に海外の音楽好きに日本のレコードの熱狂的なファンが一部いるので、そういった市場のニーズを理解すると高額になるレコードを当てやすいです。

3. 専門店で売ればそこそこの値段で売れる

レコードが売れなかった場合でも、新品未開封で保存してれば原価割れしたとしてもある程度の値段で恐らく売れます。

販売する側としてもシールド(未開封)のアイテムとして売り出せるので、売りやすいためです。

また、レコードの場合はレコードの専門店が多くあるので、そういったお店に持っていけばハードオフのような大手チェーンよりも良い値段で買い取ってくれます。

▼参考
レコードのおすすめ買取店5選を比較!選び方や高く買い取ってもらうコツを紹介

レコード転売のデメリット

1. 値段が上がるまでに時間がかかる

レコードを買ったとしても、値段が上がるまで早くて1年、長ければ数年〜10年以上かかるもののあります。

これは、増産をしない生産限定盤などの場合は売り切れたタイミングや、そのアーティストの知名度向上、再評価のタイミングなどによって変わります。

そのため、買っても数年は辛抱しないと高額盤にならない可能性があります。

他によくあるケースはメジャーデビューして人気になったバンドのインディーズ時代の音源が高く売れるなどです。

初めに紹介した「レコード転売をおすすめできない理由」につながってきますが、とはいえ好きでもなければ「このバンド、もうすぐメジャーデビューしそう」などの目星を付けるのは難しいので、ここら辺が分かりづらいのもデメリットと言えます。


2. 場所をとる

レコードの保管方法はそこまで難しくないと紹介したのですが、とはいえ、レコードはCDの何倍もあるので場所をとります。

数枚だけ買う場合なら場所をとりませんが、高さも奥行きもあるので収納スペースに余裕がない人にとっては置き場所に困るかもしれません。

大量のレコードを収納するための専用のコンテナやラックも売ってるのですが、そこそこの値段はしてしまいます。

3. 幅広い音楽の知識が必要

レコードの転売で成功するためには様々な知識が必要です。

幅広い年代のアーティストのどのアルバムが評価されてるのか、また、ファン層はどこが多いのかなどの把握は最低限必要です。

例えば、言い方はあまり良くないですが、お金を持ってない学生がメインターゲットのアーティストのアイテムは正直高額になりづらいです。

「廃盤になったら高額を出してでも買いたい」と思うのはお金を持っている音楽好きの層(恐らくおじさんがメイン)なので、そういった層に支持されてるのか?は知っておく必要があります。

また、後は先ほども少し触れましたが、海外の熱狂的なファンがついているアーティストのアナログは高騰する傾向があります。

高額になりやすいレコードを買うコツは?

ここからは初心者でも狙いやすい高額になりやすいレコードの特徴を紹介します。

ちなみに、中古品の転売は難易度が高いので初心者には基本的におすすめしません。

既に中古品として販売されてる段階で、新品として流通がなくなったものは査定の段階で値段がつくので、販売価格と転売した価格で大きく利益を出すことは難しいからです。

また、中古品は盤やジャケットの状態によって価格が大きく変動するので、初心者の場合は新品の転売をおすすめします。

1. 生産限定盤を狙う

これは一番わかりやすいですが、生産限定盤(増産しないレコード)を買うと、当然廃盤になった後に値段が上がります。

例えば、毎年4月に開催されるレコードストアデイと11月のブラックフライデーに開催されるものには生産限定盤のアイテムが多いです。

また、こういったイベントは音楽好きから人気の高いアーティストの限定盤中心に販売されるので、まずは行ってみて数枚買ってみても良いかもしれません。

2. 和モノを狙う

海外の音楽好きが買いやすいのはシティポップのような和モノと呼ばれるレコードです。

和モノとは意味としては邦楽のことなのですが、主にシティポップなどの昭和の時代に流行った邦楽を指して言います。

分かりやすく人気なのは吉田美奈子や大瀧詠一関連のアイテムです。

また、この辺りのレコードは世代的にも40代や50代が好きな音楽である可能性が高いと言えます。

3. 人気インディーズバンドの会場限定販売盤

人気インディーズバンドのレコードやCDがライブ会場限定で売っていることがよくあると思います。

そういったアイテムは、後から欲しいと思っても手に入らないので高騰する可能性が高いです。

ただ、これは当然ライブに行く必要があるので、好きな人気インディーズバンドのライブに行った時に限定盤のものは2枚くらい買っておく、位の感覚でいた方が良さそうです。



4. 再発ではなく1stプレスの時に買う

レコードは基本1stプレスの方が再発盤よりも高く値段がつきます。

反対に、いくら人気のあるアーティストの名盤と呼ばれてるアルバムでも、再発盤の場合は全然値段が上がらないなんてこともあるので、ここはかなり注意が必要です。

筆者が過去に売って高額になったレコード

1. 「君の名前で僕を呼んで」OST Limited Peach Edition


このレコードは、2018年公開の映画「君の名前で僕を呼んで」のサウンドトラックです。

発売時に14,999枚限定でピーチヴァイナル仕様のレコードが販売されており、それを観賞用と保存用に2枚買っていたのですが、3年後くらいに新品未開封で45,000円で売れました。

元の値段が5,000円くらいだったと思うので、値段としては単純に9倍になりました。

限定盤で高値がついたのも大きいですが、Sufjan Stevensや坂本龍一が参加しててサントラとしても人気が高い1枚だったことも高く売れた理由になっています。

2. スーパーカー「スリーアウトチェンジ」


スリーアウトチェンジは先ほども少し紹介した90年代のバンド、スーパーカーの1stアルバムです。

私が売ったのは2017年にデビュー20周年を記念して発売された完全生産限定盤で、これも20,000円程で売れました。

買った当時の値段は5,500円です。

特典にオリジナルのステッカーが入ってたことや、初めてアナログ化されたレコードだったことも高く売れた理由として考えられます。

3. カネコアヤノ「燦々」


音楽好きから安定した人気のあるシンガーソングライター、カネコアヤノの2019年発売アルバム「燦々」

これも20,000円程で売れています。

このレコードは重量盤とファーストプレスがあるのですが、今回買ったのはファーストプレスだったので値段が高くついたと思われます。

4. スピッツ「三日月ロック」


スピッツの名盤「三日月ロック」

言わずと知れた国民的バンドですが、音楽好きからの人気も高いのでレコードも全体的に高価格帯で販売されている印象です。

このアルバムも、5,000円〜6,000円位で購入したものが18,000円で売れています。

5. Frank Ocean「Blonde」オフィシャルリリース盤

(画像出典:https://stockx.com/ja-jp/frank-ocean-blonde-limited-2xlp-vinyl-black)

次に紹介するのはFrank Oceanの名盤「Blonde」のブラックジャケット仕様のレコードです。

ちなみにこのアルバムは米タイム誌で評論家が選ぶ2016年のベスト・アルバム第1位になっています。

これはFrank Oceanが24時間限定でオンラインストアで販売したアイテムだったため、110,000円位で売れました。

ブート盤が流通してるようですが、オフィシャル盤は今でもかなり高い価値がついてるのでこういった希少価値の高さはやはり重要です。

レコードはどこで売るの?

筆者は、要らなくなったレコードは基本メルカリかヤフオクで売っています。

市場価値が高まれば、当然レコードショップでも高く買い取ってくれますが、とは言えやっぱり販売価格で直接売れるヤフオク・メルカリの方が高く売れます。

梱包したりする手間が気にならないのであれば、直接自分で出品することをおすすめします!

まとめ

レコードの転売は音楽好きにはかなりおすすめ、音楽好きではないなら基本おすすめしません。というのが私の結論です。

実際に私が転売目的で買ったのではなく、好きで買っていて要らなくなったものがこんなに高く売れた、という経験しかないから、というのもありますが。

興味ある方はまずは目星をつけて手元に最悪残っても良いものを1枚だけ買ってみる、といった始め方をしてみるとリスクが小さいのでおすすめです!