ジャーマンプログレ(クラウトロック)のおすすめ名盤21選
クラウトロックとは60年代末から70年代にかけて西ドイツで登場した実験的音楽のことで、後のポストロックにも大きく影響を与えたと言われています。
元々は英国からザワークラウトというドイツの漬物が不味いことからつけられた侮辱的な名称でしたが、今では蔑称の意味はほとんどなく、ジャーマンプログレと同義として使われることが多いです。
今回はそんなジャーマンプログレの名盤を21枚紹介します。知らないバンドがあったら是非聴いてみてください!
Kraftwerk「The Man Machine」(1978)
メディアからは「エレクトリック・ダンス・ミュージックのビートルズ」とも呼ばれたクラフトワーク。この「The Man Machine」は「人間解体」とも呼ばれている名盤です。
代表曲の「The Model」はBig Blackやヒカシューにもカバーされてる名曲です。
プログレというととっつきづらい実験的な音楽かと思うかもしれませんが、クラフトワークは冷徹かつキャッチーな楽曲が特徴的で、Joy Divisionの「Closer」のようなサウンドが好きな人には特におすすめ。
おすすめトラック…「The Robots」「The Model」
Cluster「Sowiesoso」(1976)
ハンス・ヨアヒムレーデリウスとディーターメビウスで構成されるドイツの音楽デュオ、クラスター。もともとはKlusterというバンドを組んでいたメンバーの2人が綴りをKからCに変えて始めました。
レーベル移籍後わずか二日間で録音されたこの作品ですが、メンバーが田舎町に住んでいたというのもあるのか、このアルバムは都会の喧騒とは離れたミニマルで幻想的なサウンドを聞かせてくれます。
実験的な音楽が多いこの時代のドイツの音楽の中でもクラスターのこのアルバムはかなり親しみやすく、聴きやすいです。後にブライアン・イーノとも組んで作品を発表しています。
おすすめトラック…「Zum Wohl」「Es war einmal」
Can「Future Days」(1973)
1968年に西ドイツで結成された前衛音楽グループ、Can。
中心メンバーのホルガ―・シューカイやイルミン・シュミットは音楽学校で60年代の実験音楽の第一人者、シュトックハウゼンから現代音楽を学んでいたため、その独創性に満ち溢れた音楽はハイクオリティながら、評価されたのは80年代に入ってからでした。
「Future Days」はアフリカン・パーカッションを奏でるドラムと気怠いボーカルが特徴的で、3曲目「Moonshake」は民族音楽っぽさがありつつも、ポストパンクの先駆けのような曲。
おすすめトラック…「Future Days」「Moonshake」
Faust「Faust Ⅳ」(1973)
ノイズミュージックやインダストリアルの源流とされているFaust。このアルバムは日本では「廃墟と青空」としても知られています。
そもそもクラウトロックとは英国の音楽シーンからザワークラウトというドイツの漬物が不味いことからつけられた侮辱的な名称なので、1曲目の「Krautrock」はあえて少し自虐的なタイトルをつけているわけですが、この曲はインダストリアルノイズの洪水と淡々とした反復リフから成る10分を超えるインストナンバーで、とても聴き応えがありかっこいいです。
おすすめトラック…「Krautrock」「The Sad Skinhead」
Amon Düül Ⅱ「Yeti」 (1970年)
1968年に結成された西ドイツのロックバンドADⅡ。このアルバムの邦題は「地獄!」で、おそらく最も評価の高い作品です。
ハードロックとサイケデリックを独自の感性で融合し、神秘的な女性コーラスで耽美に味付けしたジャーマンロックの金字塔的作品。壮大さのせいかどことなく呪術的な怖さがあるんですが、それも含めて引き込まれてしまう魅力があります。
おすすめトラック…「Burning Star」「Gulp a Sonata」「Flesh-Coloured Anti-Aircraft Alarm」
Guru Guru「Ufo」(1970)
60年代にフリージャズの世界で活動していたドイツ人のドラマー、マニ・ノイマイヤーを中心に68年に西ドイツで結成されたロックバンド、Guru Guru。
このアルバムは彼らの1stアルバムで、小気味いいマニ・ノイマイヤーのドラミングとジミヘンのような猛毒ギターが重苦しく混沌とした別世界を作り上げています。
さっき紹介したAD2と系統が似ているので、AD2が好きな人には是非グル・グルも聴いてほしいです。
おすすめトラック…「Stone In」「Next Time See You at the Dalai Lhama」
Tangerine Dream「Exit」(1981)
タンジェリン・ドリームは電子音楽やアンビエントの先駆けとなったこともあり、難解な印象も強いバンドですが、この「Exit」はその中ではかなり聴きやすく、ポップでさえある作品だと思います。
極上のシンセサイザーが絶品のSF映画のサントラのような名曲「Kiev Mission」から始まり、静謐で妖艶な「Remote Moving」に至るまで全曲捨て曲なしです。
クラフトワークのような機械的な冷徹さが好きな人に特におすすめです!
おすすめトラック…「Kiev Mission」「Exit」
Klaus Schulze「Moondawn」(1976)
シンセを利用したミニマルな楽曲が特徴的なクラウス・シュルツェ。このアルバムはその中でもシンセサイザーのきらびやかなサウンドが際立っている名作です。
たった2曲しか収録されていなくて1曲がなんと25分くらいあるので、修行のように感じてしまう人もいるかもしれないけど、このアルバムは綺麗なインスト曲が連続しているような感じなのでかなり聴きやすいです。
Neu!(ノイ!)「Neu!」(1972)
元クラフトワークのメンバーでもあったクラウス・ディンガーとミヒャエル・ローターが、クラフトワークから離脱し新たに結成したバンド「Neu!」
バンド名は「言葉を持たぬ実験電子音楽」というポリシーの基、「新しい」という意味があるこの名前になったそうです。
代表曲「Hallo Gallo」は機械的なカッティングと無機質なビートが10分以上繰り広げられる曲。構成だけ考えればあまりにも退屈な曲だし、今でこそ傑作と評価されていますが、アルバムは当時たった3万枚しか売れなかったそうです。
実験的なクラウトロックの中でも過剰な装飾やノイズというよりは「シンプルネスの極致」という革新性に溢れたアルバムです。
おすすめトラック…「Hallo Gallo」「Weissensee」
Harmonia「Musik Von Harmonia」(1974)
クラスターのメビウスとロデリウスがNeu!のマイケル・ロザーと1973年に結成した企画バンド「Harmonia」。実働は約3年ながらブライアン・イーノからも絶賛されました。
全曲アンビエントな電子音楽から成るこのアルバムはNeu!の色が濃く出ている作品です。「Dino」はNeu!の持ち味であるハンマービート感満載の疾走感あふれるナンバー。
他にもミニマル・ポップな「Watussi」や、密教の祝祭みたいに不気味でメロディアスな「Sonnenschein」など、魅力ある曲がたくさん詰まったアルバムです。
おすすめトラック…「Watussi」「Dino」
Anyone’s Daughter「Piktor’s Verwandlungen」(1981)
ヘルマン・ヘッセの短編集「ピクトルの変身」をもとにして作られたコンセプト・アルバム。
小説の朗読を挟みながら進んでいくという大胆な構成で展開されてく繊細なシンフォニック・プログレ・サウンドが特徴です。
ジェネシスのように幻想的でメロディアスでありながら、ハードロック的要素も併せ持つところに圧倒されます。
A.R. & Machines「Die Grüne Reise」(1970)
The Rattlesとして60年代にデビューした独ロックシーンのパイオニア、Achim Reichelのプロジェクト「A.R. Machines」の名盤「Die Grüne Reise」。
伝統音楽を意識したCANのような前衛サウンドが特徴的で、空間系エフェクターを多用した魅惑的なサイケサウンドと小気味いいカッティングから成る楽曲は、不気味ながらも心地よさを刺激してくれます。
おすすめトラック…「Globus」「Ich bin dein Sanger, du bist mein Lied」「Cosmic Vibration」
Neuschwanstein「Battlement」(1979)
ボーカルの歌い方がピーター・ガブリエルそっくりなことから「ドイツのジェネシス」とも呼ばれているアート色強いシンフォロックバンド、「Neuschwanstein」。
煌びやかなアコースティックギターと叙情的なシンセサイザーから成る楽曲は非現実的な美しさがあります。ジェネシスへの愛もふんだんに感じるので、ジェネシスフォロワーにはマストの1枚。
おすすめトラック…「Loafer Jack」「Beyond the Bugle」
Agitation Free「Malesch」(1972)
中近東音楽とサイケデリック・サウンドを融合した1972年のデビュー作。
異国的な怖さがありつつも、陶酔感溢れるトリップ・ミュージックの金字塔的名作です。
「静」と「動」のバランスが見事な「Sahara City」や、怪しげなシンセサイザーが光る「Ala Tul」などドラッギーな曲が多く、認知度はやや劣りますが、クラウトロック好きに聴き継がれている名盤です。
おすすめトラック…「Sahara City」「Ala Tul」
Slapp Happy「ACNALBASAC NOOM」(1980)
Slapp Happyはイギリスの実験音楽家アンソニー・ムーアとアメリカの詩人ピーター・ブレグヴァド、ドイツの女性シンガー、ダグマー・クラウゼの3人が72年に結成したアヴァンギャルド・ポップ・バンド。
ファウストと共に1973年にレコーディングするも、前作「Sort Of」が全く売れず、レーベルがリリースを拒否したためにこのアルバムが日の目を見たのは1980年に入ってからのことでした。
気品溢れる優雅なポップながら、どこか陰鬱な雰囲気を漂わせる名曲「Casablanca Moon」は必聴です。
Murphy Blend「First Loss」(1970)
ドイツのオルガンハードロックバンドのデビュー作にして唯一作。プログレならではの展開の複雑さはあれど、サウンド的にはヘヴィーサイケとかハードロック寄りです。
Wolf-Rodiger Uhligは3年間クラシック音楽を学んでいたということもあり、バロック音楽とハードロック、プログレ、サイケをブレンドした楽曲はなんとも神秘的です。
綺麗なオルガンと歪んだギターをバックに泣きメロを歌い上げる「Past Has Gone」は名曲。
おすすめトラック…「At First」「Past Has Gone」
Popol Vuh「Hosianna Mantra」(1971)
アコースティックギターと管楽器や弦楽器、電子音楽を組み合わせて宗教的なテーマを追求したバンド「Popol Vuh」
このアルバムは中でも名作と言われている3枚目で、ロックを求めてる人にはちょっと違うのかもと思ったけど、多くの人の琴線に触れる音楽そのものの美しさがありおすすめです!
崇高な女性ボーカルと洗練されたピアノのサウンドを聴いていると、洋風の静かな庭園にいるみたいな落ち着きを感じます。ジャーマンプログレとして見たら異彩を放ってるのかもしれないけど、自然体で幽玄な音楽世界が楽しめる傑作です。
おすすめトラック…「Hosianna Mantra」
Novalis「Sommerbend」(1975)
1970年に結成されたシンフォバンドNovalisの代表作。「過ぎ去りし夏の幻影」という邦題がつけられたことでも知られています。
一曲目「Aufbruch」はギターはダンスロック調のヘヴィーな曲なのに、ジャケットの世界観をそのまま音にしたような奇妙な哀愁がくせになるインスト曲。
技術的な面でどんくさいとか言われてるみたいですが、夏が終わってしまったみたいなノスタルジーと青春を詰め込んだような作品です。哀愁溢れる泣きメロを聴かせてくれるので日本人にとっては入りやすいアルバムなのではないかと思います。
おすすめトラック…「Aufbruch」「Sommerbend」
Grobschnitt「Rockpommel’s Land」(1977)
シンフォロックへと路線チェンジを経たのちにリリースされた4枚目のアルバム。
「おとぎの国へ」という邦題でもあるこの作品は全体を通して明るく、コンセプトアルバムにもなっています。エレキギターとシンセサイザーを丁寧に絡ませた「Anywhere」や、19分を超える大作「Rockpommel’s Land」など、充実感が味わえる作品です。
おすすめトラック…「Anywhere」「Rockpommel’s Land」
Brainticket「Cottonwoodhill」(1969)
Brainticketは多国籍なメンバーが在籍していましたが、一応ジャンルとしてはジャーマン・プログレに属するみたいなので紹介します。ジョー・ダマトを彷彿とさせる、イタリアのC級ホラーのようなジャケットが印象的です。
メンバーがソウル系のジャズバンドに在籍していたというのもあり、どことなくソウルとかファンクっぽいグルーヴを奏でるギターとノイズがブレンドしているトリップ・ミュージック。
サイケ色が強く、アンダーグラウンドな音楽が好きな人にお勧めしたい1枚です。ちなみに以下ライナーの紹介文です。
After Listening to this Record, your friends may not know you anymore” and “Only listen to this once a day. Your brain might be destroyed!”
(このレコードを聞いたら、君の友達は君のことが分からなくなってしまうかもしれない。これを聴くのは1日に1回までだよ。そうしないと君の脳が壊れてしまうから!)
おすすめトラック…「Black Sand」「Brainticket」(Part Ⅰ~Ⅱ)
Eloy「Inside」(1973)
1969年に結成されたドイツのプログレッシブロックバンド「Eloy」。サウンド的には英国のプログレやシンフォ・ロック、スペース・ロックに近いと言われています。
このバンドもオルガンを多用したハードロック的音楽なんですが、このB級感が自分は好きです。アシッド・ロックからの影響も色濃くメロディアスなので、別世界にいるような不思議な感覚に襲われます。
1曲目「Land Of No Body」は17分を超える大作ですが、個人的にはちょっと毒のある雰囲気を漂わせてる中盤以降の曲が好きです。この辺りの曲はハードロックよりもサイケが好きな人にお勧めしたいです。
おすすめトラック…「Future City」「Up And Down」
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