【ノーベル文学賞作家】一度は読みたい川端康成のおすすめ小説10選
1968年に日本人初のノーベル文学賞を受賞した日本を代表する作家、川端康成。
読んだことなくとも一度は名前を聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。
筆者自身、大学生時代に一度「雪国」から入り小説は全ての作品を読んだ小説家の1人でもあります。
今回は、全ての作品を読んだ上でランキング形式でおすすめの作品を紹介します!
硬派な純文学作家のイメージを持っている方も多いかもしれませんが、読みやすい小説も多くあります。
そして独特の世界観と面白さがあるので、是非読むきっかけにしてもらえたら幸いです!
川端康成とは
川端康成は1968年に日本人初のノーベル文学賞を受賞しました。
日本人でノーベル文学賞を受賞したのは川端康成と大江健三郎の2人だけです(2017年にノーベル文学賞を受賞した日系英国人のカズオ・イシグロを含めれば3人になります)
日本人的な繊細な心を表現した美しい文章が高く評価され、受賞に至ったと言われています。
授賞式での「美しい日本の私」というスピーチでも知れらています。
世界的に日本文学の繊細さや美しさを広めた第一人者のような存在です。
とはいえ個人としては、そんな硬いイメージがあったために小説を読んだ時に少し驚くことも多かったです。
「雪国」のような情景描写の美しい小説もあるのですが、人間の狂気や欲望を生々しく描いた小説が意外と多く、そういった小説にも魅力を感じました。
川端康成のおすすめ小説10選
1位:みずうみ
「その清らかな目のなかで泳ぎたい、その黒いみずうみに裸で泳ぎたい」(本文抜粋)
美しい少女を見かけると、取り憑かれたように後をつけてしまう34歳の元教師の回想です。
主人公の桃井銀平は、玉木久子という教え子を教師でありながら後をつけて愛し合い、それが明るみになったことで教職を追われたのでした。
そして、その中で出会った15歳の少女に大して「その清らかな目のなかで泳ぎたい、その黒いみずうみに裸で泳ぎたい」と願うようになったのでした。
いわゆるストーカー心理を描いた話なので共感しながら読むことは難しいですが、彼の歪んだ心理や複雑な生い立ちなどが美しい文章で描写されていて、とても惹かれる作品でした。
2位:雪国
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。(本文抜粋)
恐らく誰もが一度は聞いたことがあるこの名文から始まる川端康成の代表作「雪国」
夜の雪景色を「夜の底が白くなった」と表現しているのがおしゃれです。
親の財産で生活している文筆家の島村は、雪国の温泉地で芸者の駒子と出会います。
許婚者である行男の療養費を稼ぐために芸者になったという駒子に惹かれながらも、深くは踏み込まず、行きずりの関係を持つだけにとどまります。
話の展開自体は少し地味なのですが、駒子の奔放ながらも一途な生き方、島村のどこか冷めた人柄、そして雪国の温泉地の情景描写が魅力的でどんどん読み進められます。
また、文章の中心が駒子と島村の会話なのですが、この2人の会話が良いですね。
特に駒子が言った「なんとなく好きで、その時は好きだとも言わなかった人のほうが、いつまでもなつかしいのね。忘れないのね。別れたあとってそうらしいわ」という言葉が好きです。
3位:伊豆の踊子
「ほんとにいい人ね。いい人はいいね」(本文抜粋)
川端康成の初期の短編小説の傑作「伊豆の踊子」。
孤独に悩んだ二十歳の旧制高校生である主人公は伊豆へ一人旅をすることにします。
その行中で旅芸人の一行と出会い、下田までの道を彼らと共にすることになりました。
そこで出会った純粋無垢な踊子に彼の心は惹かれていき、孤独や歪んだ心が溶けていくような気持ちになるのでした。
恋愛小説というよりは、思春期に感じる社会における自分の存在意義に対する不安のようなものを抱えた青年が、踊子との交流によって変化する繊細な心情を描いた青春小説のような色合いが強いです。
ちなみに伊豆の踊子は新潮文庫で買うと三島由紀夫の解説がついているので、是非新潮文庫で読むことをおすすめします。
4位:眠れる美女
忘れるにまかせるということが、結局最も美しく思い出すということなんだ。(本文抜粋)
少し賛否分かれますが、個人的におすすめしたい川端康成の短編小説「眠れる美女」。
既に男ではなくなった老人たちだけが通う秘密の館に足を踏み入れてしまう江口という老人の話です。
その宿のサービスは、薬か何かで眠らされた裸の娘がただ横になっていて、寄り添ってくれるというものになっています。
薄気味悪い設定ではあるのですが、その若い肉体を通してもう直ぐやってくる自分の死について思いを馳せたり、自分の人生を回想するところが印象的です。
官能的でありながら退廃的な唯一無二の世界観を楽しむことができる名作です。
5位:古都
京都を舞台に、全く別の人生を歩んできた双子の姉妹の人生を描いた「古都」
老舗の呉服屋の娘として育った千重子と杉林で労働をする苗子には身分の差があり、苗子は千重子のことを「お嬢さん」と呼ぶようになります。
また、千重子に好意を寄せる秀男は瓜二つの苗子に声をかけ、だんだんと苗子の方に惹かれていくようになります。
京都の祭事や四季の変化が目に浮かぶような美しい描写と、2人が心を通わせていく様子が描かれた名作です。
6位:少年
お前の指を、手を、腕を、胸を、頬を、瞼を、舌を、歯を、脚を愛着した。(本文抜粋)
川端康成が愛した「少年」を描いた自伝的小説。
清野少年という美しい少年と心を通わせた思い出と別れ、そして主人公自身の孤独と幸福について描かれています。
この小説は50歳になったタイミングで旧制中学時代の出来事を振り返りながら執筆されました。
今作は人間味溢れる生々しい描写が中心となっているので、そういった話の方が好みの方には是非おすすめしたい1冊です。
7位:山の音
会社経営をしている尾形信吾(62)は、妻・保子、長男・修一とその妻・菊子と暮らしています。
菊子は信吾を慕ってくれていますが、ある日修一の浮気を知ってしまいます。
家族ながらも複雑な人間関係の中で自分の閉ざされた内面世界を持ちながら立ち回る初老の主人公を中心に、戦後の危うい家族の均衡を絶妙に描いた名作です。
8位:女であること
弁護士夫人である市子が若い女性2人に翻弄される長編小説「女であること」
妙子という死刑囚の娘を引き取って暮らしていた夫婦の元にさかえという女性がやってくるところから始まります。
女性として生きていくことやその限定的な自由に触れた今作は現代的な感覚で理解しやすいです。
また、女性の恋愛における情熱や嫉妬などが生々しくも美しく描かれているのも魅力だと感じます。
「女であること」の業のようなものが鋭い視点と端麗な文章で描かれています。
9位:舞姫
敗戦後の家族が崩壊へと向かう過程を描いた川端康成の「舞姫」
舞姫としての夢を娘に託す妻の波子、そして妻の浮気に気が付きながらこっそり財産の確保を進める夫の元男、そして自分の舞姫としての未来を心のどこかで諦め、香山という男性を追いかけるようになる娘の品子など、家族の不均衡が至る所で描かれています。
そして、表面上は理想の家族でありながらも水面下でどんどんそういった綻びが顔を出す描写はゾッとするような感覚になります。
通俗的な小説ではあるので知名度もそこまで高くなく、評価もそこそこですがドロドロとした展開と心理描写がとにかく面白いです。
10位:片腕
ある男が若い娘の腕を一晩借りて、自分の部屋に持ち帰り過ごすという不思議な内容になっています。
その女性の片腕を自分の肩に付け替えることで、自分の汚れた血が清純な娘の中に流れてしまわないか危惧する場面があり、男はその腕を純潔さの象徴のように捉えています。
シュールレアリズム的な世界観で描かれる妖艶さと悲しさがふんだんに描かれた珠玉の短編です。
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