【実話】ウルフ・オブ・ウォールストリートを考察 欲まみれのビジネスマンの末路
制作国:アメリカ
公開年:2013年
監督:マーティン・スコセッシ
脚本:テレンス・ウィンター
出演:レオナルド・ディカプリオ、ジョナ・ヒル、マーゴット・ロビー、マシュー・マコノヒー、カイル・チャンドラー、ロブ・ライナー
「ビジネスマンなら一度は観るべき映画」の代名詞としても名高い「ウルフ・オブ・ウォールストリート」
監督は「タクシー・ドライバー」で有名なマーティン・スコセッシで、主演はレオナルド・ディカプリオといういかにも名作っぽい感じだが、はじめに言っておくと内容は正直かなり下品。
体感だが、金・ドラッグ・セックスの3要素で3時間のうちの2時間30分くらいあると感じる。
アカデミー賞5部門ノミネートという肩書だけで名作だから大丈夫だろうと恋人や家族と観ないようにくれぐれも気をつけて欲しい。もちろん、ビジネスマンであれば楽しめる名作というのは間違いない。
ウルフ・オブ・ウォールストリートのあらすじ
主人公のジョーダン・ベルフォートは金持ちになるべく、22歳で証券会社に入社し、証券マンとしてキャリアをスタートさせる。
しかし、いよいよブローカーとして働き始めるというその日に暗黒の月曜日によって会社は倒産。
ジョーダンは職を失い、小さな会社で株式仲介人として働き始める。
そこはペニー株という非上場企業の株を売り、手数料を50%もとるという会社だった。
ジョーダンは自身の巧みなセールストークにより、ペニー株をどんどん販売し瞬く間に売上を伸ばしていく。
そして子供用の家具を販売していたドニー•アゾフと出会ったことをきっかけに2人で会社を設立。
ストラットン・オークモント社と名付けたその会社は、ジョーダンがセールストークをたたき込んだことにより、あっという間に売上を伸ばして急成長。
ジョーダンは26歳にして年収49億ドルという凄まじい金額を稼いだ。
彼の会社には野望を持った若者が集まり、ジョーダンをはじめ、会社はセックスとドラッグのオンパレードという状態になっていった。
違法な取引などもしていたことから、彼は次第にFBIにも目をつけられるようになる。
そして最後は自分も捕まることを悟ったドニーが罪を軽くするためにジョーダンを裏切り、ジョーダンは逮捕されて3年の実刑判決を言い渡される。
ウルフ・オブ・ウォールストリートの考察
ドニーはなぜ裏切ったのか
あらすじでも紹介したが、自分自身の罪を軽くするためだ。
ジョーダン以外の仲間も逮捕しようと考えていたFBIは、ジョーダンに盗聴器を取り付け、捜査に協力するように言う。
しかし仲間のことを売りたくなかったジョーダンは、ドニーに「盗聴器が仕掛けられてるから喋るな」と書いた紙を見せる。
そんなジョーダンに対して、自分ももうすぐ逮捕されることを悟ったドニーは、その紙をFBIに見せて自分の罪を軽くしようとしたのだった。
どこまでが実話なのか
この映画の主人公、ジョーダン・ベルフォートは実在の人物で、映画の通りストラットン・オークモント社を設立した。
そして後にストラットン・オークモント詐欺と呼ばれるペニー株を騙し売る詐欺で巨万の富を築いていく。
実際にドラッグやセックスに溺れた半生も自身の伝記「ウォール街狂乱日記『狼』と呼ばれた私のヤバすぎる人生」よると本当だそう。
また、女性の頭を丸坊主にしたり、社内セックスが横行しすぎて「セックス禁止」の張り紙を社内に貼っていたのも実話とのことだ。
ちなみに最後のセミナーのシーンで司会者役として登場しているのがジョーダン・ベルフォート本人。
ウルフ・オブ・ウォールストリートのテーマは?
ウルフ・オブ・ウォールストリートは実話に基づいた映画なので明確なテーマのようなものはあまりない。
ジョーダンに対する視線も割とフラットで悪役とも善人とも描かれていないように思えた。
ただ、アメリカンドリームを手にした男とその末路を見ることによって、「お金があっても本当に幸せなのか」を再考するきっかけになる。
ドラッグでハイになっていないと、巨額の金を扱い、人を騙し、大勢の従業員を束ねるなんてことできなかったのではないかと思う。
ジョーダンはその野心によって、手段を選ばずお金を稼ぐことを選んだが、自分の人生もそうしていきたいのか、違う人生にしたいのか。観た後に嫌でも考えさせられる部分がビジネスマンに刺さるのは間違いない。
ウルフ・オブ・ウォールストリートに出てくる名言
「俺を軽薄な拝金主義者だと思うなら、マクドナルドで働け!そこがお前の場所だ」
これは大勢の部下の前で行ったスピーチでのジョーダンの発言。
お金を稼ぐことに罪悪感を感じていたり、軽蔑しているようであれば稼ぐことはできないのだというジョーダンのこの発言は、野心を持った若い部下の心に火を付けた。
そして、この発言でもジョーダンの話術の巧みさ、部下のモチベーションを上げるのがいかに上手かというのも詰まっている。
イカれてる?不潔だ。不潔だ、普通の世界では。でも普通の世界なんて望むか。
ジョーダンの考えが現れているこの発言。
自分自身のことを客観的に分かっていながらも、金を稼ぐために普通であることも高潔であることも捨てて稼ぐ道を望んだジョーダンの覚悟のようなものが現れている。
カードの支払いがある?すぐに電話をかけ始めろ。大家が追い出しを?すぐに電話をかけ始めろ。金を稼げば問題は解決する。
この言葉もジョーダンがスピーチで部下を鼓舞するために言った言葉だ。
営業の電話を部下にかけさせるために言った言葉だが、金で何でも解決できると思っているジョーダンの考えも現れている言葉となっている。
有名なペンのシーンとは?
ウルフ・オブ・ウォールストリートの有名なシーンにビジネスマン必見のシーンがある。
(ジョーダン)なんでも売れる?このペンを俺に売ってみろ。ブラッド。
(ブラッド)このナプキンに名前をかけ。
(ジョーダン)ペンは?
(ブラッドがペンを渡す)需要と供給だ。
(ジョーダン)必要性を作った。
どうやってペンを売るのかを説明するときにブラッドが「このナプキンに名前を書いてくれ」と言う。
書くものを持っていない人はペンを買わなければならず、こうやって需要を作ることでものを売ることができるという例として紹介されている。
これは最後、ジョーダンが講演をするシーンにも繋がっており、ジョーダンは「このペンを俺に売れ」と観客に言う。
観客は口々に「このペンはとても素敵で…」「このペンで思い出を書いたら…」などのペンのセールストークをするが、必要性を作れてない。需要そのものを作れる営業マンが強いということを象徴するシーンであり、ここにジョーダンが成功した秘訣が詰まっている。
ウルフ・オブ・ウォールストリートの感想
この映画は登場人物全員が私利私欲の具現化のような存在で、勧善懲悪的な話と異なりそれが最後まで変わることがない。
金、ドラッグ、セックスに溺れた主人公は最後逮捕されるが、セミナーの様子を見る限りジョーダンのような男はきっとまた成功を手にするし、野心と行動力さえあれば本当に何でもできるのではという気持ちになってしまう。
ただ、映画自体は終始コメディー調で進むが、最後はドラッグの幻覚症状にやられ、まともに歩けないジョーダンの姿はダーレン・アロノフスキーの「レクイエム・フォー・ドリーム」のような怖さを感じた。
3時間以上ある本作が退屈に感じなかったのはレオナルド・ディカプリオの怪演と、絶妙に時系列が崩された映画の構成、そしてあまりにも欲望剥き出しの人間の姿に対する一種の憧れのような感情で目が離せなかったからなのかもしれない。
目が眩むようなアメリカン・ドリームを手にしながらも盛者必衰的な最後を迎える本作は、自分がどんな人生を歩みたいかを考えるビジネスマンにとって一度は見るべき作品と言える。是非1人で観てみて欲しい。
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