東京事変のおすすめの名曲13選ー人気曲と隠れた名曲を併せて紹介
2003年、当時24、5歳だった椎名林檎がプロの音楽集団を引っ提げて結成したバンド、東京事変。
19歳の時に「幸福論」でデビューし、ソロとしても順調なキャリアを歩んでいた椎名林檎が引退を考えるほどモチベーションが低下していた中で結成されたバンドでもあります。
2012年に解散しましたが、2020年に「再生」として復活しました。
今回は東京事変の語り継いでいきたい名曲15選と、その魅力について紹介します。
群青日和
2004年にリリースされた東京事変のデビューシングルにして代表曲。
洗練された演奏と、「新宿は豪雨」から始まり、「青く燃えていく東京の日」で終わる雨に降られていた東京がだんだん晴れていくような歌詞の描写が見事な名曲です。
特に、ここの歌詞は無機質さと人間味が混ざった「あなた」のことを絶妙に表現しているフレーズだと感じます。
突き刺す十二月と伊勢丹の息が合わさる衝突地点
少し あなたを思い出す体感温度
スーパースター
2006年発売のアルバム「大人」に収録された曲「スーパースター」
作曲は亀田誠治で、歌詞は椎名林檎がイチローに対する憧れや尊敬の気持ちを宛て書きしたものになっています。
東京事変の楽曲では珍しく、ストレートなバンドサウンドが楽しめるスローテンポのギターロックバラードです。
歌詞は憧れの存在に対して抱く純粋なリスペクトと自己嫌悪、そしてそんな存在に対して最後には自分を鼓舞するような気持ちになる心境の変化が描かれています。
「私はあなたの孤独に立つ意思を思い出す度に 泪を堪えて震えているよ」というフレーズが綺麗で印象的です。
ちなみにイチローはこの曲について以下のようにインタビューで語っていました。
「そもそも僕はスーパースターって言葉、大嫌いで。でも、スーパースターの前に『私の』ってついてたことがね。あの瞬間にレッドゾーンまでブーンと針がね、振り切ったんですよ。僕のなかで」
空が鳴っている
2011年発売。亀田誠治作曲、椎名林檎作詞の「空が鳴っている」
不穏な空気を漂わせながらも、疾走感のあるアップテンポなロック曲です。
歌詞は好きな人との心中、もしくは好きな人を手に入れるために手にかけてしまった心情が歌われていると言われています。
「呼吸のおとだけがふたつ残っている」→「鼓動はあじけなくひとつ響いている」に2番になると変化しているのも印象的です。
空が鳴っているというタイトル通り、好きな人を手にかけてしまった人間の不穏な未来が予感される曲にも思えます。
能動的三分間
2009年発売の東京事変の6枚目のシングル。
グリコ「ウォータリング キスミントガム」のCMにもなったことから聞いたことある人も多いのではないでしょうか。
歌詞はカップ麺のことを歌っていますが、そんなラーメンを作っている三分間でさえ能動的に生きようとすることの大切さが歌われているように思います。
「三分間でさよなら はじめまして」というフレーズからも、カップ麺ができるのを待つ三分間で新しい何かと出会うような人生がいいんじゃないかと思わせてくれます。
浮雲の心地よいコーラスと相まったかっこいい一曲です。
落日
2005年にリリースされた3枚目シングルのカップリング曲で、キーボード中心のバラード。
夕陽が沈む様子とオーバーラップさせて一つの生命が失われてしまったことを嘆いている曲です。
『「何が悲しい?」と聞かれたって何も哀しんでなど居ないさ 丁度太陽が去っただけだろう」という歌詞からも、死は落日(太陽が沈むこと)のように必然だと理解しながらも受け入れられない心情が描かれています。
雪と戯れる様子が描かれていることからペットのような存在に向けた歌ではないかとも言われている曲です。
私生活
2007年リリースのアルバム「娯楽」収録曲。
ちなみにこの「娯楽」というアルバムは全曲椎名林檎以外のメンバーが作曲を担当しています。
東京事変にしてはシンプルでストレートなバンドサウンドが楽しめるバラードです。
椎名林檎の詩文的な言葉遊びの面白さを生かした歌詞は東京事変の大きな魅力だと思いますが、そんな椎名林檎が「行かないで」と振り絞るように叫ぶところにグッときます。
今夜はから騒ぎ
2012年に発売された東京事変のラストシングル。
この曲とともに「事変は来る閏日解散致します」と宣言し、東京事変は解散になりました。
「もう屹度(きっと)潮時よ 顔と名前の貸借」という言葉で潔く去っていったのが何とも東京事変らしく、自分たちのバンドイメージを崩さないかっこいい去り方だったように感じます。
「足を洗うべきよ 媚と恨みの売買」という言葉は自分たちの活動(芸能活動)を皮肉っているのかもしれません。
古風な表現の良さは健在で、最後まで意欲に溢れた実験的かつキャッチーな曲を残してくれたように感じます。
修羅場
2005年に発売された3枚目のシングル。アルバム「大人」にも収録されていてそれぞれバージョンが異なります。
この曲はとにかく浮雲の繊細なギターが心地良く、メロディーもキャッチーなので実験的な曲が苦手な人にも聴きやすい曲です。
歌詞は抽象度が高く難解ですが、どことなく夏の寂しい夜の一幕を感じさせる物語が思い浮かびます。
大奥の主題歌だったということもありますが、諸行無常的な考え方を感じさせるような、大人の関係性についての歌にも思えます。
何方(だれ)かに会えば記憶を奪取(ぬす)まれよう
喉を使えば貴方が零(こぼ)れ出(い)で溢(あふ)れよう
OSCA
2007年に4枚目のシングルとして発売され、3rdアルバム「娯楽」に収録されている浮雲作詞・作曲の楽曲「OSCA」
「ペトロールズ」というバンド名も英国で「ガソリン」を意味する単語からとったほど、車好きとしても知られている長岡亮介(浮雲)が、イタリアのスポーツカーと「オスなのか」という意味を掛けてつけたタイトルです。
浮雲のギター捌きと変則的なベースラインが絡み合って、大人の魅力に溢れたかっこいい一曲になっています。
キラーチューン
2007年に発売された東京事変の5枚目のシングル。3rdアルバム「娯楽」に収録され作曲はキーボードの伊澤一葉です。
アップテンポの開放感溢れる楽曲で、キラーチューンというタイトル通り、突き抜けるようなメロディーの爽快感が頭から離れない名曲です。
『「贅沢は味方」もっと欲しがります負けたって』という冒頭の歌詞は太平洋戦争の標語「贅沢は敵だ」「欲しがりません勝つまでは」を逆にした言葉になっています。
歌詞は心の豊かさや贅沢とは何なのかをテーマに描かれていますが、そんな豊かさの象徴のように「貴方」との出会いが登場するのも素敵です。
ご覧、ほらねわざと逢えたんだ
季節を使い捨て生きていこう
夜も秋も盗めないよ
貴方は私の一生もの
シーズンサヨナラ
2010年発売の4thアルバム「スポーツ」収録曲。浮雲が作詞作曲も手掛けています。
アップテンポで疾走感に溢れた楽曲ですが、「季節知らないままさよなら」という出だしのフレーズから冷めきっているとも未練がましいともとれる絶妙な男女の関係性が見事に描かれています。
そんな気持ちの変化を空模様に例えている歌詞も秀逸です。
指きった瞬間なんて 空の色 七色に光った
冷めきった終点なんて 秋空の 夕日に寄り添った
勝ち戦
4thアルバム「スポーツ」収録曲。
能動的三分間同様、「ウォーターリング キスミント」のCM曲として使われています。
歌詞は全て英詞ですが、「自分の人生を生きること」をテーマとしている曲です。
自分が向けられる情熱をしっかり向けて生きていくことこそが「勝ち組」なのだと言っているように感じられます。
和訳は以前のMステで掲載されていたものですが、自分を鼓舞できるフレーズに溢れてます。
Won’t go back to where I was ‘
(思い出迷子は負けの始まり)
Cause that’s the only way to win, oh
(今を実在する者だけが勝つ)
閃光少女
4thアルバム「スポーツ」収録曲で、スバルの軽自動車「ステラ/ステラリベスタ」「R2」のCMソング。
配信限定シングルとして2007年にはリリースされましたが、「スポーツ」に収録されるまでCD化はされていなかった楽曲でもあります。
閃光少女というタイトル通り、今を輝いて生きていたいという気持ちが込められています。刹那的に今この瞬間を生きるという意味では「勝ち戦」と通ずるものがあるようにも感じます。
今日現在(いま)を最高値で通過して行こうよ
明日まで電池を残す考えなんてないの
昨日の誤解で歪んだ焦点(ピント)は
新しく合わせて
そして「これが最期だって光って居たい」という言葉でこの曲は幕を閉じます。亀田誠治のメロディーセンスも光っていますが、椎名林檎の生き方に対する哲学や美学にあふれた名曲です。
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