人生の真実を描く天才、グザヴィエ・ドランのおすすめ映画5選

弱冠19歳で監督・脚本デビューを果たし、日本でも人気のある映画監督グザヴィエ・ドラン。

ゲイであることをカミングアウトしている監督でもあり、彼の作品は現代の若者の視点から「愛」や「家族」に対する普遍的なテーマを観客に投げかけるものが多いです。

今回はそんなドラン監督の繊細な人間描写が光るおすすめの名作をネタバレなしで紹介していきます。

1.「マイ・マザー」


グザヴィエ・ドランの自伝的映画でもあるデビュー作。

19歳作ったデビュー作にしてカンヌ国際映画祭で上映された作品でもあります。

大まかなあらすじとしては反抗的な息子、ユベールに困り果てた母親が厳粛な寄宿学校にユベールを入れてしまい、ユベールはそれに対して母親から「捨てられた」と感じるようになるというもの。

母親の愛情を強く必要としているからこそ感じてしまう少年の苛立ちや母親の苦悩が繊細に描かれている秀作です。

また、ドラン自信が演じた主人公・ユベールもゲイという設定であり、家族や恋愛に悩む人に刺さる映画になっています。

2.「トム・アット・ザ・ファーム」

いわゆるストックホルム症候群(誘拐犯のことを好きになってしまう心理)を描いた少し異質なサイコスリラー調の作品です。

この映画もドラン本人が主演を務めています。

物語は、交通事故でギョームという恋人を亡くしてしまったトムが、葬式に参加するために彼の実家のある農場に向かうところから始まります。

そこには兄のフランシスと母親アガットが2人で暮らしていて、ギョームは生前、母親にゲイであることを隠していたため、トムの存在はただの友達として認識されてしまうのでした。

兄のフランシスからもカミングアウトするなと脅され、トムはギョームの面影をフランシスの中に見つけてしまい、暴力を振るわれ続けても農場からなぜか帰れないでいる…。というのが大筋です。

3.「わたしはロランス」

性同一性障害のMTFでレズビアンという女性を描いた映画「わたしはロランス」

国語教師のロランスはフレッドという彼女がいました。

30歳の誕生日にロランスはフレッドに打ち明けます。僕は女になりたい。この体は間違えて生まれてきてしまったんだ」

混乱したフレッドはロランスを「今までの時間は何だったのだ」と激しく責めます。

しかし、それでもロランスを愛している彼女はやがてロランスの最大の理解者として受け入れるようになっていく、というお話です。

だんだんメイクや服装などを教えてロランスが「望む姿」で生きられるよう、偏見の多いモントリオールの田舎町でフレッドは共に奮闘していくことを選びます。

愛がすべてを変えてくれたらいいのにというキャッチコピー通り、人と人との愛と苦悩に溢れた名作です。

4.「Mommy/マミー」


グザヴィエ・ドランの映画の中でおそらく一番有名な作品「Mommy」

この映画ではADHDの息子、スティーヴを持つ母親の葛藤と愛情を描いています。

「障害を持った子どもの親が身体的または精神的な健康を害した場合、子どもを法的手続きなしで入院させることができる」という法案が可決されたカナダで2人の母子の運命は変わっていく、という話になっています。

インスタを意識した1:1のアスペクト比が特徴的で、Oasisの「Wonderwall」がかかるシーンは映画史に残る名シーンです

カンヌ国際映画祭のプレミア上映では13分ものスタンディングオベーションを受けたことでも知られています。

5.「たかが世界の終わり」

個人的にグザヴィエ・ドランの映画の中で最高傑作だと感じている作品です。

紹介してきたように、ドランの映画は家族のディスコミュニケーションを描いた映画が多いのですが、その集大成のような作品になっているのが2017年公開の本作です。

ストーリーはギャスパー・ウリエル演じる主人公ルイが「自分の死を伝える」ために実家に帰るところから始まります。

しかし、自分が帰ってきたことにより家族という歯車が微妙に狂ってしまうことに気が付いてしまうルイは、自分が死んでしまうことをなかなか言い出せないでいる、というのがあらすじです。

重要なのは、ある午後この人たちが一緒に時を過ごし、一つの空間でどう展開するのか。誰かが耳を傾けていて、誰かは上の空、誰が誰を見ていて、誰が誰を守ろうとしているか。これは人生そのもの。お互いに驚くほど無関心で、愛し方を知らない人たちの人生の中で、瞬きのような、とても限られた一幕。観客のみなさんに判断を委ねています。(グザヴィエ・ドラン)

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