羊文学のおすすめ15曲を紹介ー羊文学はなぜ若者の心を打つのか
羊文学とはどんなバンドか
2020年8月にメジャーデビューしたスリーピースロックバンド、「羊文学」。
2022年にはTHE FIRST TAKEに出演したり、アニメ「呪術廻戦 渋谷事変」のエンディングを務めたりと、知る人ぞ知るバンドから今や若者であれば大体名前は知っているクラスのバンドになったんじゃないかと思う。
筆者はスーパーカーのナカコーが2017年くらいにかっこいいとTwitterで言っていたので聴いてみたバンドだったけど、本当に今まで聴いたことないような、繊細さと力強さが絶妙に共存した楽曲と独特な歌詞であっという間に好きになったバンドだった。
若者にとっては近い年代の目線で描かれる都会の生活の憂鬱とノスタルジーにも共感できるし、楽曲自体は90年代のオルタナ、60~70’sのロックのエッセンスを感じさせるにも関わらず、彼女たちにしかない独自の音楽を作り上げているところも、洋楽の土壌がない人にも親しみやすい理由なんじゃないかと思う。
羊文学のおすすめの曲15選
1. 踊らない
2017年にリリースされたEP「トンネルを抜けたら」収録。
1番人気という曲ではおそらくないのだけれど、個人的に1番羊文学の中で好きな曲なので紹介したい。
力強いギターリフと伸びやかなボーカルの声が印象的な楽曲。
歌詞は抽象的だけど、恋人に別れを告げるまでの一幕のような情景が浮かぶ歌詞になっている。
最後の「君はかわいい とてもかわいい 僕ではとても愛せない」というフレーズが心に残る。
2. 1999
2018年にシングルとして発表された「1999」。
世紀末のクリスマスをモチーフにした曲で、羊文学の代表曲とも言える名曲。
メロディーがとてもとっつきやすくキャッーで、優しくストレートなギターロック。
「それは世紀末のクリスマスイブ 僕が愛していたあのひとを 知らない神様が変えてしまった」というサビの歌詞も文学的で印象に残る。
クリスマスの浮き足立った気持ちと儚さが一気に心の中に蘇る名曲。
3. 天気予報
2018年に発売された1stフルアルバム「若者たちへ」に収録。
キャッチーなサビと優しいアルペジオが心地良く、未来への希望と若者特有の焦燥感のようなものが上手くブレンドした一曲。
4. ミルク
2019年発売のEP「きらめき」収録。
羊文学の特徴的な力強さと柔らかさだけじゃなくて、どことなく漂っている恋愛の焦燥感が刺さる一曲。
「意味のない毎日を積み重ねるだけで 悔しいけど幸せ」というフレーズが個人的には好き。
5. マフラー
2018年発売のEP「オレンジチョコレートハウスまでの道のり」収録。
冬の寂しさとノスタルジーが詰まった幻想的な曲。
この楽曲はシューゲイザー、ドリームポップの影響が色濃く出ていて、Slowdiveやシガー・ロスのような浮遊感がある。
抽象的な歌詞もハマっていて、列車の外に見える綺麗でちょっと寂しい自然の情景が思い浮かぶ。
6. Blue. 2
2017年発売の「トンネルを抜けたら」収録。
インタビューで、ボーカルの塩塚モエカは「部活帰りの中学生が2人で線路に飛び降りたっていうニュースを見て、そのときの気持ちを想像したり、自分が中学生だったときのことを考えながら書きました。」と語っている。
誰かを失った喪失感と、それに対する感情が渦巻くように轟音ギターに乗せて歌われる。静と動のバランスも心地良い。
「大人になるには早すぎた」と締め括られ、誰かを失っても続く日常に折り合いつけることに対する思春期ながらの戸惑いのようなものが上手く描かれている一曲のように思う。
7. 春
2017年発売の「トンネルを抜けたら」収録。
楽曲の展開がプログレのように目まぐるしく変わるのが面白く、癖になる一曲。
歌詞に関しては嫌いだった高校の友達のことを思い浮かべて書いた曲だそう。どことなくきのこ帝国の「eureka」の頃のようなダークさがある。
ぼそっと「嫌い」と呟くのも印象的で、面と向かって伝えることができないような重たく醜い感情でさえも、この曲を聞いている間は許さるような、そんな気持ちになれる。
8. Step
2017年発売の「トンネルを抜けたら」収録。
「トンネルを抜けたら」の最後に収録されているということもあり、他の楽曲で歌われていた負の感情のようなものにどこか光が差すような曲になっている。
素朴な邦画のエンディング曲のような、爽やかさと少しの寂しさを持ちつつも前へ向かおうとしているような雰囲気が印象的。
9. ドラマ
2018年発売の「若者たちへ」収録。
「青春時代が終われば私たち生きてる意味がないわ」という出だしから始まり、羊文学のシニカルさと無邪気さが詰まっているように思う。
若い鋭利な感性とストレートなギターロックの相性が存分に発揮された一曲。
10. more than words
呪術廻戦「渋谷事変」 エンディングテーマ。
無機質なギターのアルペジオと四つ打ちのドラム、そして相反するかのようなボーカルの力強く伸びやかな歌声が印象的な1曲。
若者ならではの孤独感や焦燥感、閉塞感を感じる歌詞になっていて、夜の都会を歩きながら聴きたい曲になっている。
11. 光るとき
TVアニメ「平家物語」のオープニング曲。
どことなく以前の曲とは違う包み込むような優しさと、タイトル通りきらめきを感じさせる曲になっている。
「諸行無常」がテーマの平家物語に相応しく、この曲も刹那的な煌めきを感じさせるような、儚さを感じさせる。
「いつか巡ってまた会おうよ 最終回のその後も誰かが君と生きた記憶を語り継ぐでしょう」 という歌詞が、そんな「盛者必衰」に対する一種の希望の光のようなフレーズになっているのも印象的。
12. ロマンス
2019年発売のEP「きらめき」収録。
人生を謳歌する自由な女の子の開放感や力強さが前面に出ている曲。
「そうだよ 女の子はいつだって無敵だよ」というフレーズは、どことなく今の時代だからこそ刺さる言葉のように思う。
初期の鬱屈としていた頃の楽曲と比べると、明るい心象風景のようなものを感じることができる。
13. 祈り
2020年発売のEP「ざわめき」に収録。
低く歪んだ芯の太いギターが心にストレートに入ってくる曲。浮遊感あるコーラスも心地良い。
「夜の中で君が一人泣いても誰も気づきやしないから構わないよ」と弱さを肯定してくれる優しい曲。攻撃的な曲よりも最近はこういう寄り添ってくれるような曲が多いように思う。
14. OOPARTS
2022年発売のアルバム「our hope」収録曲。
フジテレビドラマ「バイバイ、マイフレンド」の主題歌でもある。
羊文学の楽曲の中では初の試みでもあるシンセサイザーを導入し、新境地へと踏み出した。
地球がオーパーツと化し、火星へと移住することになる未来を憂いたものが歌詞のテーマになっていて、歌詞の世界観も神秘的なものを感じさせるものになっている。
15. ラッキー
最後は、2021年発売の「ラッキー」を紹介して終わりにしたい。
2020年12月にメジャーデビューしたこともあって、NTTドコモ新料金プラン「ahamo」とのコラボレーション曲でもあり、メジャーデビュー後の飛躍を予感させた一曲だ。
この曲について塩塚モエカは「悩み事は尽きないけれど、自分の幸せをつくれるのは、結局は自分の心だけ。大していいことのない毎日も、めちゃくちゃな想像でこっそり笑い飛ばし、元気にやっていきたい」と語っていて、初期の頃の楽曲の方向性と比べると、多くのバンドがそうであるように、今の羊文学は前向きで明るい未来へと向かっていることが分かる。