【トラウマ必至】ゾッとする大人向けの怖い絵本おすすめ10選
意外と知られていない「大人向けの絵本」の世界。
今回は中でも「これ、本当に子どもを対象にしてるの…?」と疑ってしまいたくなるようなトラウマ級の怖い絵本を集めました。
絵本ならではの不気味さとシュールさがよりその怖さを引き立てて、心に嫌なものを残すような作品が多いですが、ホラー耐性のある方は是非読んでみてください。きっと今まで知らなかった新鮮な恐怖と出会えます。
1. おぞましい二人
子供を殺す計画を立てる奇妙な男女
「愛しあおうとして長時間懸命に頑張っても、成果はなかった」(本文抜粋)
世界でカルト的人気を誇るエドワード・ゴーリーによる絵本「おぞましい二人」
イギリスで起きた「ムーアズ殺人事件」という実際に起きた連続殺人事件を元に、子供たちを次々と殺害していく奇妙な男女2人を描いています。
酒癖の悪い両親を持つ似たもの同士として出会った2人は、一緒に暮らし始めるようになり、「一生の仕事」として子供を殺す計画を立てるようになります。
モノクロの不気味なイラストと、第三者視点による語り手が淡々と2人の暮らしや末路を語っているところが残酷さと悲しさを引き立てています。
2. いるのいないの
トラウマ級のラストシーン
最後の一コマが怖すぎると話題になった京極夏彦による怪談絵本「いるのいないの」
夏休みをおばあちゃんの家で過ごすことになった主人公の「ぼく」は、誰かの気配を感じるようになります。
そしてそんな主人公の少年の行動を見ながら読んでいくうちにどんどん不安になり、疑心暗鬼になっていく構成が見事です。
文章も怖いですが、温かみのない絵もより一層恐怖を引き立ててきます。和製ホラー系の絵本が読みたいならこれはおすすめです。
3. たべてあげる
もう好き嫌いしないように
SNSでも話題になったブラックなテイストの絵本の代名詞「たべてあげる」
「食べ物の好き嫌いしないように」という意味で元々作られたようですが、それにしても「子供が読むにしては怖すぎる」と話題になりました。
物語のあらすじは、ピーマンが嫌いな主人公のりょうたくんが、自分の前に現れた小さなりょうたくんに自分の嫌いな食べ物をこっそり食べさせるところから始まります。
お母さんからも残さず食べたことでりょうたくんは褒められるようになるのですが、その後、何でも食べさせたせいでどんどんもう1人のりょうたくんは大きくなります。
そして、その状況に驚いていると、「こんどはりょうたくんが嫌なの?」と、りょうたくんを食べて、本物のりょうたくんとすり替わります。
ここまででもかなり怖いのですが、その後の展開がまだあるので、どんな結末を迎えるのか?読んでみて欲しいです。
4. あけるな
現実に戻れない恐怖
谷川俊太郎による絵本「あけるな」
今まで紹介した作品とは怖さのベクトルが少し異なるのですが、考察するのが好きな人には是非おすすめしたい作品です。
物語のあらすじは至ってシンプル。主人公は「あけるな」「あけるとたいへん」「あけるなったら」と書かれた扉を好奇心と不安を抱えながら次々に開けていってしまうというお話です。
そして、最後には背を向けた男が部屋の中にいて、その男の背中にある扉にも入ってしまうのです。
そこからの展開が見事なので是非読んで欲しいのですが、この話では自分の心の中を旅することの危うさと、ノスタルジーに囚われて現実へ戻れなくなってしまう怖さを描いてます。
筆者自身も子どもの頃に読みましたが、大人になって読み返すと抽象度が高く、様々な解釈が出来る作品だと感じます。
5. かがみのなか
「当たり前」が揺らぐ恐怖
「夜のピクニック」「蜜蜂と遠雷」で知られる恩田陸と樋口佳絵の共作「かがみのなか」
鏡の中の世界がどうなってるのか、幼い頃に一度は考えたことがあると思います。
この話ではある女の子が学校にある大きな鏡の中の世界に引き込まれてしまうという話になっています。
作画がとても怖いのはもちろんなのですが、とにかく日常の中にある「当たり前」が揺らぐ恐怖を描いています。
毎日会う友達や家族は果たして昨日会った人と同一人物なのか。そんなことさえ疑ってしまいたくなるような怖さを感じることができる作品です。
6. くうきにんげん
見えない魔物が潜んでいる
綾辻行人と牧野千穂による怪談絵本シリーズ第8巻「くうきにんげん」
子どもが読んでも普通に恐怖を感じる話ですが、この話は大人になってから読むとより刺さるものがあるのではないかと思います。
「くうきにんげん」は、普通の人間に襲いかかって空気に変えてしまう存在です。
そしてそんな「くうきにんげん」は「君のそばにもたくさんいる」のだと言います。
このストーリーでは「空気」が持つ、同調圧力をかけて、人の個性を奪う力を描いています。
そして自分がそんな「空気」に加担していないかについても再考させられるので、怖さと深さを兼ね備えた良作です。
7. ギャシュリークラムのちびっ子たち
AからZの順番に殺されていく子どもたち
「おぞましい二人」でも紹介した作家、エドワード・ゴーリーの作品。
「ギャシュリークラムのちびっ子たち」はAからZの頭文字ごとに存在する26人の子どもたちが淡々と殺されていく過程を描いています。
子どもたちがただ無力に死の運命に逆らえないのをページをめくるたびに突きつけられます。
そして、絵で描かれているのはその命を奪った一瞬だけで、どうしてそうなったのかなどが一切語られないのもこの作品の不気味さを増長させています。
そんな死の不条理さや、何も配慮せずに万人の元に平等に訪れるという本質を描き出してるようにも感じられます。
8. おともだち できた?
伏線に気が付いた時に本当の恐怖がやってくる
「夜のピクニック」「蜜蜂と遠雷」などで知られる恩田陸による絵本「おともだち できた?」
タイトルと表紙からはほのぼのとした雰囲気が醸し出されてますが、子供にはちょっと読ませられない衝撃的な展開に驚かされます。
ある女の子とその家族は知らない街へ引っ越すことになりました。
そして、お母さんは娘に言います「おともだち さがしていらっしゃい」と。
女の子はともだちを探しに公園へ行き、「ともだち」を作ります。
ここまでがあらすじで、一度読んだ時はイラストの怖さにひたすら驚くだけかもしれませんが、何度もイラストを見ながら読み返して伏線に気が付いた時にもう一度恐怖が襲ってきます。
9. ケチャップマン
シュールな悪夢のような絵本
じぶんにしか できない なにかを さがして
まいにち なやむ ケチャップマン
ポテトフライの専門店を見つけたケチャップマンは、自分のケチャップを売り込みますが相手にされません。
そして、ポテトの揚げ方をひたすら教わりますが上手くできず店長に叱られながら夜遅くまで働く毎日を過ごしていました。
社会人なら分かると思いますが、本当に切実で切ない設定です。ケチャップマンの世界観は悲壮感と哀愁に溢れています。
自分にしかできないことを探して、自分の才能を売り込むも相手にされない…。確実に子供ではなく大人をターゲットとしている絵本です。
そして、ここまでなら大人向けの少しシュールで切ない設定の絵本で終わってしまうのですが、この本が怖いと言われている理由は悪夢のようなクライマックスにあります。
10. 人殺しの女の子の話
人を殺したい
女の子はそう思いました
理由はありませんでした(本文抜粋)
衝撃的な冒頭から始まる絵本「人殺しの女の子の話」
どことなく、人を殺した理由を問われて「太陽のせい」だと答えた男を描いたカフカの「異邦人」に似ているなと思ったお話です。
人を殺したい衝動に駆られた女の子は、大好きだったお母さんを殺し、怒られるのを恐れてお父さんも殺してしまいます。
そして両親がいない悲しみに暮れて自首をするのですが、女の子がこう言うシーンが印象的です。
天国も地獄もありはしないわ、生活、生活、生活、あるのはそれだけよ
怖さもありますが、独特の切なさもある話になっています。